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さよならの夏
詩のような作品です。
夏が来る
また訪れる
もうじき
この手に触れる
そんな距離に
知らぬ間に近づいた
暑い季節は
心を洗い流す
大量の汗を生み出し
きっとそれは
胸に突き刺さったままの
忌々しい棘をも
洗い流してくれるだろう
さよならの夏
あなたが去った夏
夏が来る
また訪れる
もうじき
この手に触れる
そんな距離に
寂しげな夏
あなたがいない夏
知らぬ間に寄り添う
暑い時期は
痛みを掻き消す
鬱陶しさを生み出し
そしてまた
胸に残されたままの
忌々しい記憶をも
掻き消してゆくのだろう
さよならの夏
あなたが去った夏
ただ遠ざかってゆく
その背中を見つめていた
言いたいことは
たくさんあるはずなのに
何一つ言えぬまま
いつの間にか時だけが流れた




