順調だと思われていた二人の関係は突然崩れ去ってしまいました……。~浮気するなんて最低ですよ~
今からさかのぼること半年。
学園を卒業するその日に同級生だった彼エリッツは私への想いを告げてくれた。
――ずっと好きだった、と。
そしてそれから時は流れて。
いつしか私たちは特別な関係になった。
――婚約者同士、という。
周囲も認めてくれて。温かく見守られて。そんな状態での婚約で。私たち二人の未来への道は、祝福ムードの中、穏やかに幕開けていった。誰もその道を遮ることなどしなかった。すべてが順調だったのだ。
……けれどもそんな関係はある日突然崩れ去った。
「どう、して」
ある日の昼下がり、ちょっとした用事があったのでエリッツの家へ行ったのだけれど、私はそこで彼が私以外の女性とも親しくしていることを知ってしまう。
しかも、ただ仲良く喋っている、なんてものではない。
彼は明らかに浮気していた。
女性と深い仲にまで発展して。
「どうして貴方が女性を部屋に連れ込んでいるの……?」
さすがに黙ってはいられず、そのことについて追及。
すると彼は急に鬼のような顔になる。
そして数秒の間の後に何の前触れもなく「ごらあああああああああ!!」と叫んできた。
「勝手に入ってくるなよ!」
「え……でも、入るななんて言われていなかったわ」
「あり得ねえだろ! そんなの! お前、どこまで勝手なんだよ!」
「落ち着いて」
「あのなあ、そういう問題じゃねえんだよ!」
そしてそこからの流れで。
「もういい! 喋りたくねえ! お前との婚約なんざ破棄だ!」
そこまで言われてしまった。
「二度と俺の前に現れんな!」
かつて、ずっと好きだった、と言ってくれたエリッツは――鬼のような形相で私を睨む人間になってしまった――もう私が知っている彼はこの世界のどこにもいない。
すべてが変わった。
すべてが終わった。
私たち二人に未来はない。
◆
あの後、私は両親に相談し、エリッツらから慰謝料をもぎ取る道を選んだ。
色々大変さはあったけれど親の知り合いの協力もあって上手くいった。そしてエリッツとその浮気相手の女性それぞれから慰謝料を支払ってもらうことに成功した。
彼らは後にその件で険悪になり破局したようだ。
所詮その程度の関係だったのだ。
彼らの関係はそれほど強固なものではなかった。
……でもだからといって許せるわけではない。
堂々と浮気されて呑気に笑っていられるほど私は寛容な人間ではないのだ。
◆
あれから一年半。
親の協力もあり私はとても良い人柄の資産家の男性と結婚することができた。
おかげで今は愛されながら生きることができている。
ちなみにエリッツはというと。
先の夏に体調を崩してからずっとまともに生活できないような状態となっており、日に日に衰弱してゆく一方だそうだ。
また、エリッツの浮気相手だった女性はより効率的にお金を稼ぐために結婚詐欺の仕事を受けるようになっていたそうなのだが、その途中で失敗して相手の男性に殴られこの世を去ることとなってしまったそうである。
◆終わり◆




