どんな時も感じの悪いわがまま妹が婚約破棄されました。~今こそ私が幸せになる姿を見せる時です!~
わがままな妹ミレッシェニアが婚約破棄された。
ミレッシェニアは可憐な容姿の持ち主。しかしそれゆえ甘やかされて育ってしまい、結果、性格に難ありを絵に描いたようなわがまま娘になってしまった。また、姉である私に対しては特に高圧的な振る舞いをしてくる。それは今に始まったことではないのだけれど。ただ、ミレッシェニアの私への当たりが日に日に強まっていることは事実である。
そんなミレッシェニアは、とても良い条件の男性と婚約することができて浮かれていたのだけれど、昨日婚約破棄を告げられてしまった――理由は彼女の性格の悪さだったようだが――それで、それからというもの、ミレッシェニアは荒れている。
「姉さま! そこ邪魔!」
「え」
「どいて!」
「今掃除しているのだけれど」
「うっるさい! いいからさっさとどっか行ってちょうだい。鬱陶しいのよ、邪魔しないで」
――と、そんな感じで荒れているミレッシェニアの目の前で。
「私結婚が決まったの」
「このたびお姉さんと結婚させていただくことになりました、アイルテンと申します。よろしくお願いします」
私は親しくしていた男性との婚約を発表した。
「姉さま……何よこれ、どういうこと? 嫌みなの? ねえ! これって嫌み!? わたしが悲しんでいる時に婚約を発表するなんて……どういうことなの!? 酷すぎない!? あまりにも酷いわ、こんなこと!」
ミレッシェニアはかなりショックを受けている様子。
その顔が見たかった。
それが純粋な思いだ。
「ねえ! 姉さま! わたしに喧嘩売ってるの!? どういうことよ、はっきり答えなさい!」
「分かったわ。じゃあはっきり言うわね。私、貴女のこと、ずっと好きじゃなかったの」
「……なんですって」
「貴女っていつも私に対して心ないことをしてくるでしょう? 不機嫌になれば当たり散らす、暇があれば暴言、そんな感じで。だから貴女といるとしんどいのよ。主に心が」
――今はもう、何も隠す必要はない。
言いたいことをはっきりと言う。
そのくらいの権利は私にだってあるはずだ。
「妹を可愛いと思えないなんて! どうかしてるわ!」
「普通の妹なら、ね」
「なっ……どういうことよ!?」
「ミレッシェニアは感じの悪い妹。だから可愛いと思うことはできない。……むしろ不快な存在」
「っ……!」
「結婚したら家からは出ていくわ。だから、以降、私に関わってこないで。一切。私もう貴女の顔見たくないの」
別れの時はもうすぐやって来る。
それはとても嬉しい瞬間。
それはとても幸せな瞬間。
その時が来るのが楽しみだ。
◆
――数ヶ月。
私はアイルテンとの結婚と同時に実家を出た。
新生活を始めたのだ。
そして今は夫となった彼と二人同じ家に住みのんびりとした日々を楽しんでいる。
実家にいた頃は妹から絡まれることが多くて疲れることも多かった。でも今はそういうことはない。だから無駄なストレスを抱えることなく生きられている。そして、余計なストレスがなくなったということはつまり、自分の中にあるやる気のうちの他のことにつぎ込める分が多くなったということでもある。
一方ミレッシェニアはというと、私が結婚して幸せになったことへの嫉妬で正常な精神を失ってしまったそうだ。
◆終わり◆




