婚約破棄された美人令嬢は真の意味で大切に想える人と生きることを選びました。
美人令嬢リュシティリアは先日婚約破棄されたばかり。
しかしながらそれほど落ち込んではいない。
どころか。
それまでより活き活きとした表情で過ごしている。
「リュシティリア、思ったより元気そうで良かった」
「ありがとう~」
「婚約破棄されたって聞いた時はびっくりしたよ」
「実は私も驚いたのよ~。いきなりの婚約破棄だったから。悪いことをした心当たりもなかったし~」
リュシティリアは今日、親友であるミリアと、穏やかなお茶会を楽しんでいる。
「もっと落ち込んでるかと思った」
「ごめんなさいね、心配させてしまって~」
二人は以前から定期的にお茶をしていた。
そして今日もまたこうして穏やかな時間を共にしている。
子ども時代から仲良しだった二人だから、たとえどんなことがあろうとも、その関係が変わることはない。
「でもさ、良かったんじゃない?」
「どういうことかしら~?」
「今だから言えるけどさ。あのタンタランとかいう男の人、何人もの女の人の手出してたみたいなんだよね」
少し気まずそうな顔をしながら話すミリア。
「あら~……そうだったの」
リュシティリアは戸惑い何度も目をぱちぱちさせていた。
「なら婚約破棄になって幸運だったのかもしれないわね~」
リュシティリアとミリアの友情は永遠だ。
◆
あれから数年。
唐突な婚約破棄事件から幾つもの季節が流れた。
リュシティリアはミリアと一つの屋根の下で暮らしている。
二人は女性同士。けれども特別な関係になっている。恋人同士、というには少々足りないかもしれないけれど。それでも二人の関係というものは確かに存在しているものだ。晴れの日も、雨の日も、彼女たちは互いを想っている。そして、生涯寄り添い合って生きようという意思を持っている。
ちなみにタンタランはというと。
あの後少しして、婚約者がいるにもかかわらず別の女性二人と深い仲に発展しておりそのことが婚約者にばれてしまい、激怒され――婚約破棄されたうえかなり高額な慰謝料を支払わされることとなってしまった。
また、それによって彼が失ったものは婚約者とお金だけではない。
やらかしの内容が世に広まったために、彼は、社会的な評価も地に堕とすこととなったのだった。
◆終わり◆




