表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 5 (2025.1~)   作者: 四季


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

196/548

六十歳の婚約者が突然婚約破棄を告げてきました。しかもおかしな動作付きなので、もう本当に理解不能です。

 六十歳の男性アンバグドレートと婚約していたのだが。


「きみとは終わりにするぞい。ということで、婚約は破棄とするぞい」


 ある日突然関係の終焉を告げられてしまう。

 何の前触れもなくその瞬間はやって来た。


「わしはもっと美貌の持ち主である乙女と、美女と、結婚したいんじゃ。きみではまだ満足しきれんのじゃ。んで、きみとはここまでにすることにしたんだぞい」


 アンバグドレートは両手それぞれをピストルのような形にすると、ウインクして、それからバァンと撃ち抜くような動作をする。


 い、イタい……。

 いや、もう、本当に……何なんだこれは……。


 歳を重ねた人を否定するつもりはない。が、これはさすがに。身勝手に婚約破棄を決めて告げるという迷惑なうえ明らかに悪意のある行動をしておいて、こういう軽さのある行動を合わせてくるというのはどうかと思う。それに。そもそも、真剣な話題の時にふざけたような動作をするというだけでも大人としておかしい。若い子であればともかく。六十歳にもなってまだそういった子どものようなことをするというのは明らかに変だし問題があるだろう。


「本気で仰っているのですか?」

「あったりまぇ~ん」

「……あの、そういう言い方をするのは、ふざけるのはやめてください」

「何を本気になってるんだぞい?」

「重要な話をする時にふざけるのはどうかと思います」


 はっきり言ってみたのだけれど。


「んもぉーっ、本気になりすぎじゃ! 若い、若いぞい! きみはまだ若いからそんな風に真面目なだけじゃ! わしくらいになりゃ、もう、どーんな話題だって軽ぅいノリで話せるようになるんぞい。その方が聞く側も聞きやすいじゃろ? な? な? なぁ?」


 彼にはまったくもって伝わらなかったようだ。


「とにかく、きみとの婚約は破棄ぞい! 今までどうも! じゃ、バイバァイ!」


 呆れることしかできないままで、私たちの関係は終わりを迎えてしまったのだった。



 ◆



 あの後、少し時間ができたので、定期的に茶会に参加するようになった。


 そしてそこで気の合う男性と出会う。

 その男性との年の差は三つだけ。

 初めて顔を合わせたその日から話は弾み、私たちはあっという間に親しくなって、気づけば婚約するに至っていた。


 しかも彼は歴史ある領主の家の子孫。

 なので家柄的にも問題ない人。

 そのため周りから反対されることもなく、限りなくスムーズに、結ばれる未来へと歩み出すことができた。


 今度こそ幸せを掴む。

 それが私の決意だ。


 また、彼とならきっと幸せになれる、と、今は真っ直ぐに信じられる。


 こうして順調に歩めている私とは対照的に。

 かつて私を身勝手に切り捨てたアンバグドレートは今は誰にも相手にされず一人寂しく生きているようだ。

 自室にこもって一日中何もしていない脱け殻のような彼だが、今は毎日のように涙を流し「美女に相手にされないよおおお……寂しいよおお……構ってほしいよ構ってほしい遊んでほしいのにいいいい……」などという言葉を呪文のように繰り返しているそうだ。



◆終わり◆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ