晩餐会にて婚約破棄を告げられました。~ある意味それは私にとって幸運なことでした~
「マルイトレット・フィオーノ・ティシルトリーニリシニリア! 貴様との婚約、本日をもって破棄とする!」
ある晩餐会にて。
婚約者ウィズズから告げられたのは関係の終焉であった。
「貴様のような華やかなだけの女は要らん!」
「そうですか」
「そういうところも不愉快なんだよ! 生意気なところ! 貴様のような女は誰も愛さない!」
だが悲しさはなかった。
なぜなら私は元から彼のことをあまり好きではなかったからだ。
好きでもない。
関わって得もない。
そんな人に婚約破棄を告げられても、別に、それほどショックは受けないものなのである。
驚きはあるけれど、それはあくまで驚きであって、それ以上のものではない。
「はーっ、すっきり……したああああああ!!」
帰宅してから、庭にて叫ぶ。
暗幕を張ったような夜空がいつもより美しく見える。
「やーったやった! やーったやった! こーれで解放やったたた! やーったたったたやったーったた! やったねこれで! もう自由! ヘイ! やったねこれで! もう自由だよ! やーったやった! やったたたったった! ヘイ! やったねこーれでもう自由! ヘイ! やーったやった! やーったやった! こーれで解放やったたた! やったねラッキーやったねもう自由! ヘイ!」
ウィズズは感じの悪い人だった。
私の服装にいちいちいちゃもんをつけてきたり。
私が好きなもののことを敢えて否定してきたり。
そんな人だったから好きにはなれなかった。
「こーれで自由だこっれで自由! ヘイ! やーったやった! やーったやった! こーれで解放やったたた! もう何も言われはしないやったねたったった! ヘイ! やったねこーれで自由だね! ヘイ! やーったやったねやったった! やったねやったぁやったたたったかたん! ヘイ! やーったやった! やーったやった! こーれで私は自由の身! やったたた! やったねねっねねね! やったねねん! ヘイ!」
だがもうこれで彼に縛られる必要はない。
今日から自由だ。
もう不快な思いをしなくて済む。
それはとても嬉しいこと。
――後日聞いた話によると。
ウィズズはあの後別の女性に惚れ追い掛け回したものの相手にされず無視されてしまったらしくそれで心が折れてしまい、今では女性を目にするだけで体調を崩すといったような状態となってしまっているそうだ。
◆終わり◆




