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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 5 (2025.1~)   作者: 四季


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婚約者から珍しく朝の挨拶をしてもらえたのですが、その先に待っていたのは……? ~未来が分からないからこそ希望ある明日を信じられるのですね~

「おはようマリー」

「あ、おはようございます。カインスさん」


 私には二つ年上の婚約者がいるのだけれど、彼と対面することというのはあまりないことだ。


 なので向こうから声をかけてくるなんていうのはなおさら珍しいことで。

 こうして朝の挨拶をするというだけでもかなり稀なことなのである。


「今日さ、ちょっと話があるんだ」

「お話、ですか?」

「そうそう。今いいかな? そんなに時間はとらせないから」

「大丈夫ですよ、何でしょうか」


 特に何も考えず返事したのだけれど。


「マリー、君との婚約は破棄とすることにしたんだ」


 まさかの言葉を突きつけられて。


「えっ!?」


 思わず大きな声をこぼしてしまった。


「急に言う形になったことは申し訳ないと思うよ。ごめん。でも、言うべきことははっきり言わないとって思って。だから今ここではっきり告げておくことにしたんだ」

「そ、そうだったのですね……」

「今までありがとう。でも君とはここまで。さよなら、マリー」


 こうして私たち二人の関係は終わりを迎えた。


 なんてことのない平凡な朝。

 穏やかな日射しが地上に降り注ぐ時間のことだった。



 ◆



 いきなりの婚約破棄に驚いてしばらくは心身ともに若干不調であった私だったけれど、時の経過と共に徐々に傷は癒えて、一年も経てば自然と健康を取り戻すことができていた。


「マリーさん、僕と生きてくださいっ!」


 また、私のことを愛してくれる男性も現れたので、今はすべてが順調だ。


「はい。ぜひ。よろしくお願いします」

「あ、ぁ……ぁ……ありがとうございます! 本当にっ……嬉しいです! 嬉しいっ……ありがとうございますっ! 感謝の気持ちでいっぱいです!」


 一時はどうなることかと思った。

 けれども待っていたのは不幸な日々ではなかった。


 あの時心折れて生きることを諦めなくて良かった、と、今は心の底からそう思える。


 ちなみにカインスはというと、あの後不運にも馬車の事故に遭ってしまい落命してしまったそうだ。


 その話を聞いて、人生とは分からないものだな、と改めて思った。


 優位そうだった人間が不幸になることもある。

 不利な状況にあるようだった人間が幸せを掴んでゆくこともある。


 人生なんて、未来なんて、その時がくるまで分からないものだ。


 人間には未来を知る能力はない。だからその地点へたどり着くまでその姿を真の意味で目にすることはできない。けれども、だからこそ未来を信じて歩んでゆけるとも言えるだろう。明るい未来を信じて歩める、というのは、未来の姿を見ることができないからこそ。未来を知ることはできないからこそ生まれる偉大な力、というのもきっとあるのだろう。



◆終わり◆

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