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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 5 (2025.1~)   作者: 四季


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私の婚約者は心ないことばかり言ってくるうえなぜかいつも鼻水を垂らしています……。~幸せへの道は必ずあるはずです~

 私の婚約者は心ないことばかり言ってくる人だ。

 彼は完全に私のことを舐めていて、常に見下し、何をしても何を言っても許される相手であると思っている様子。


 その思い込みはかなり凄まじいもので。

 彼の中には私も人間であるという発想が欠片ほどもない。


 町でたまたま会った時でさえ「おっ、馬鹿顔女じゃ~ん」などと悪意たっぷりに嫌みを言ってくるほどだ。


 そんな彼、ラウスト・リッディーガンは、いつも鼻水が垂れている。ゆえに、周りからすれば私よりも彼の方がずっと変わり者だ。ただ、本人は少しも気にしていないようで。彼の場合、自分のおかしさにはまったくもって気づいていないようである。


「お前との婚約だけどさ、破棄するわ」

「え」

「だーかーら! 婚約破棄するって言ってんの!」

「……本気で仰っているのですか?」

「当たり前! 冗談なわけないじゃ~ん。本気だよ、本気! ホ! ン! キ!」


 いきなりのことに戸惑いながらも話を聞いてみておくことにしたのだが。


「お前はさ、俺には相応しくない女だよ。ぱっとしないし、馬鹿面だし。だからお前とは切る。オーケェ? 分かってきた? じゃ、そーいうことで! ばいっば~い!」


 大人しく聞いていたら、そのまま話が終わってしまう。


 ラウストはがに股で左右に揺れ動くような動きをしながらあっという間に私の前から走り去っていった。


 まさかこんな形で関係が終わるなんて。

 これはさすがに想定していなかった。


 ……が、悲しくはない。


 なぜなら、私はもうずっと前から彼を愛していなかったからだ。


 嫌な言葉をかけてくる。

 失礼なことをやたらとしてくる。


 そんなラウストのことは嫌いだった。


 だから、驚きはしたけれど、あくまでそれだけで。それ以上の感情、特に悲しみに近い感情が生まれることはなかった。元々嫌いだった人を失う、それは大して辛いことではないのだ。正直なところを言うなら、まぁどうでもいいから好きにして、くらいのものである。


 結婚しても嫌なことをされ続けることは目に見えている。

 ならば早めに離れる方が良い。

 きっとその方が私の未来は明るくなるのだから。



 ◆



 あれから三ヶ月。


 深く考えずに結婚相手を見つける会に参加したのだが、そこで意外な最高の出会いがあり、私の人生は大きく動き出すこととなっていっている。


 今はまだ道の途中だ。

 けれども、希望ある明日を、未来を、見据えることは確かにできている。


 だから大丈夫。


 真っ直ぐに生きていれば、きっと、幸せという日射しを浴びながら歩める。


 ちなみにラウストはというと。

 あの後好きになった女性に告白するも「鼻垂れ小僧はちょっと……」と言われ拒否されてしまったらしく、それにショックを受けた彼は、自らこの世を去ることを選んだそうだ。


 とても、とても……言葉も出ないくらい、呆気ない最期だったようだ。



◆終わり◆

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