ちょっとした用事で婚約者の家へ行ったのですが、それによって彼が浮気していることを知ってしまいました。
婚約者ロレッティオは浮気していた。
「あなたたち、一体何をしているの?」
――その日は突然やって来た。
ちょっとした用事でロレッティオの家へ行った時、ロレッティオはちょうど浮気相手の女性を自宅へ連れ込んでいるところで。
「な、なぜ、お前がここに!?」
「そういう話は後よ」
「まっ……待て! 待ってくれ! 先に質問に答えろ!」
「質問しているのはこちらなのだけれど」
薄着になった長い金髪の乙女を抱き締めながらも動揺を隠せないロレッティオの顔は眺めていると少し面白くて。
けれどもこんなあからさまな浮気を見て見ぬふりしてあげることはさすがにできないのでしっかりと突っ込ませてもらう。
「まずは話を聞かせて」
「あ、ああ……分かった、説明する……だから、親には言わないでくれ」
「言うわよ」
「なっ!?」
「だって婚約破棄する予定だもの」
「ふ、ふざけるな! そんなこと! そんな勝手なこと、悪質過ぎる。許されることじゃないぞ!」
ロレッティオはもうとにかく必死。
「悪質? それはそっちでしょう」
だが何を言われようがこちらが折れてあげる必要なんてない。
「すべて話すわよ、貴方のご両親にはね」
その後私は事情を説明した。
急に忙しくなり、いろんな意味で時間はかかったが、彼の両親は真剣に話を聞いてくれたのでその点はとてもありがたかった。
そして予定通りロレッティオとの婚約は破棄。
ロレッティオは泣いて「許してくれ! 一時の気の迷いだったんだ!」とか「ちょっとした出来心で……彼女とは本気じゃない、本気じゃなかった!」とか言っていたけれどそれは無視した。
また、ロレッティオと浮気相手の女性に慰謝料を支払いを請求。
償いはしっかりとしてもらう。
そこは譲れない。
こちらは理不尽に心を傷つけられたのだから、何の償いもないまま彼らを解放することなどできはしないのだ。
そうやってすべてに決着をつけることで、私はようやく未来へと進める――面倒臭いことでも心折れず頑張るのだ――それは未来の私を救うための行動だから。
◆
時は流れた。
多くの季節が過ぎ去った。
婚約破棄からちょうど五年になる今日、私は、愛している人と結婚する。
かつて私を傷つけた者たちは皆揃って滅んだ。
婚約者だった彼ロレッティオはある時路上で謎の男に襲われて金目のものを奪われたうえ死亡、浮気相手だった金髪の乙女はロレッティオの死によって心を病みやがて自ら死を選んだそうだ。
――悪はこの世から消え去った。
◆終わり◆




