共に行けると信じていたのですが……。~二人のその後は明暗が分かれるものとなったようですね~
初めて顔を合わせた日、私は、彼に恋をした。
そして彼もまた、親に決められてではあるものの出会った私に良い印象を抱いてくれているようだった。
私たちの始まりはすべてが順調だったのだ。
「これから、よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくね」
私たちは共に行けると信じていた。
迷いなんてなく。
疑いなんてなく。
ただ、純粋に、共に行く未来を信じることができていた――。
◆
「悪いね、君との婚約は破棄することにしたんだ」
婚約者である彼ミッツォがそんなことを告げてきたのは、ある夏の日の午後だった。
「僕、好きな人ができたんだ。そうしたら君を大切に思えなくなった。だから君とはおしまいにするよ」
「え……そんな、こと、あまりにも急過ぎませんか」
「確かに急ではある。でも仕方がないんだ。だって好きな人ができてしまったから」
「それは婚約破棄の理由には……ならないと思います」
婚約しておいて後から自分の都合で破棄したいだなんて、身勝手にもほどがある。
「なるよ」
「え」
「だって僕がそう決めたんだから」
しかし彼は滅茶苦茶なことを言っている自覚がないようで。
「今までありがとう。さようなら」
平然と別れを告げてきたのだった。
終わりはいつも唐突に。
いつか誰かがそう言っていたけれど。
それは間違いではなかった。
◆
突然の婚約破棄から数年。
時の流れはあっという間だった。
私はあの後知り合ったそこそこ高貴な家柄の出の男性と結婚、二人の子にも恵まれ、今は忙しくも穏やかな日々の中に在る。
未来のことなんて分からないけれど。ただ、今はとても幸せなので、これから先の幸せにも期待はできる。どんな時も思いやりを忘れない夫とであれば、きっと、どんなことも乗り越えてゆけるだろう。
ちなみにミッツォはというと、先日この世を去ったそうだ。
というのも、好きになった女性と結婚する方向で話を進めていたそうなのだが実はその女性には長い間交際している男性がいたそうで、ついにミッツォの存在を知ったその男性は激怒してミッツォを襲撃――それによってミッツォは落命することとなってしまったのだとか。
若干気の毒な感じもしないではないが……。
ただ、すべてはミッツォ自身の選択の結果なので、どのような結末が待っていようともある意味自業自得だろう。
◆終わり◆




