息子の婚約者を虐めるような女性は滅ぶべきです! ~悪人がどうなろうが自業自得です~
二つ年上の男性オルークと婚約してからというもの、私はずっと彼の母親である女性ルリシエラに虐められている。
婚約する際にオルークから「婚約したら僕の母親とも一緒に住んでもらうよ」と言われたので薄々不自然さを感じてはいたのだが、その予感は最も残念な形で的中することとなった――というのも、彼の母親であるルリシエラは最初から私を虐めこき使う対象にするつもりだったのだ。
彼女は私を『出来損ない女』と呼ぶ。
そして毎日のように大量の雑用を押し付けてくるのだが、驚くくらい細かい点まで指摘してくる。
きちんとこなしていてもあれこれ注意されてしまう。
それはもはやいちゃもんの域。
もうとにかく何か言ってやらないと気が済まない、といった様子で、彼女は常に私の問題点を探しているのだ。
……そんな日々はあまりにも辛くて。
何度も消えてしまいたいと思った。朝が来たらもうこの世にいなければいいのに、とも。嫌なことが多すぎて生きる気力を完全に失っていた。
少しでも早くこの地獄から解放されたい。
けれども婚約をなかったことにしたいなんて今さら言い出せるわけもない。
――だがそんなある日。
「ママが困ってるから、君との婚約は破棄することにしたよ」
オルークからいきなり告げられたのはそんな言葉で。
「え」
「だからさ、ママが困ってるんだ、君が無能すぎるから」
「本気で……?」
「うん。もちろんだよ。敢えてこんな嘘つくわけがないよね」
「……そう、ですよね」
「急に言う形になってごめん。でも本気だから、君とはさよならするよ」
こうして私たちの関係は終わりを迎える。
彼の家から出ていく時、物凄く嬉しそうな顔をしたルリシエラから「無能がいなくなって嬉しいわぁ~」とか「これでもうあんたの相手しなくて済むのねぇ、今はと~っても爽やかな気分よ」とか言われたけれど、正直「ああそうですか」くらいにしか思わなかった。
ルリシエラと離れられることは純粋に嬉しいし、婚約が破棄になったこともそれほどショックなことではない。
なので何を言われてもそれほど強く心揺さぶられることはなかったのだ。
◆
婚約破棄から数ヶ月。
かつて私にとって害悪でしかなかった彼らの末路について知ることとなった。
オルークはあの後別の女性と婚約したそう。しかしルリシエラはまたその女性を虐めたそうだ。だがその女性は強い人だったようで、虐められて黙っているような人ではなかった。ただひたすらに大人しく耐えていた私とは違って、彼女は戦う道を選んだ。
結果、ルリシエラの悪行が世に知れわたることとなり、ルリシエラは周囲の人たちから冷ややかな目を向けられることとなる。
ルリシエラの評判は著しく悪化。
それにより彼女はそれまで手にしていた多くのものを失った。
で、それを苦に自ら死を選んだそう。
悪女ルリシエラは自滅していったのだ。
また、母親の突然の死によってオルークは大ショックを受け、その精神はあっという間に崩壊。
急激に幼児退行した彼は「うまがひいてるくるまさん、ぶぅぶぅ」「おちゃがのみたいなぁ」「ママどこにいるの? あいたいよぉ、あいたい、あいたくてさびちいよぉ、ママぁ」というようなことしか言えなくなってしまっているそうだ。
◆終わり◆




