実妹に婚約者を奪われました。まさかの展開でしたが……結果的に彼らはこの世を去ることとなったようです。
「ロットさまはお姉さまには相応しくないわ!」
「ごめんな、お前との婚約は破棄することにしたから」
実妹と私の婚約者が実は裏でできていたなんて……それまで気づいていなかっただけにかなりショックだった。
「そんな……ロット、どうして……」
「お前より妹さんのほうが素敵だからさ、妹さんを選ぶことにしたんだ」
「酷いわ」
「はぁ? 酷い? 鬱陶しいこと言うなよ。俺は事実しか言ってないだろ、それなのにまるで俺が悪いみたいな言い方……ほんとやめろよ、そういうの」
こうして私は実妹に婚約者を奪われてしまったのだった。
◆
婚約破棄された衝撃の日から三週間。
衝動的に旅に出ていた私の耳に飛び込んできたのは婚約者であった彼ロットと実妹の死であった。
二人は婚約しそのお祝いにと旅行していたそう。しかしその最中に悲劇が起きて。旅館に宿泊していた夜、賊に襲われて、その襲撃により二人は命を落とすこととなったのだそう。
……他者を傷つけてまで結ばれようとした二人だったけれど、そんな彼らには幸せな未来はなかった。
人の死というのはある意味最大の悲劇だ。
身近な人の死ならなおさら。
けれども今回に限っては悲しくはなかったし涙をこぼすこともなかった。
私の人生を壊した二人。
私の心を傷つけた二人。
そんな人たちが痛い目に遭ったのだから、それは単なる自業自得だろう。
どんな人にも幸せになる権利がある、なんて言うけれど、それはあくまで罪なき人の場合。罪なき人が生まれた環境によって不幸になることは許されない、というだけの話で。幸せになる権利がある人、その中には、誰かを傷つけて幸せになろうとしたような人というのは含まれていない。
……やはり神様は行いを見ている。
そんな風に感じた。
非現実的なことかもしれないけれど、でも、無関係とも思えない。
◆終わり◆




