天気の話から始まって……まさかの展開に。〜幸せになれればそれでよしです〜
「今日もいい天気だよな」
「ええそうね」
「晴れって好き?」
「まぁ……そうね。好きよ。暑すぎる夏の晴れはさすがにちょっと苦手だけれど」
私リーズと彼アババは幼馴染みで婚約者同士だ。
近所に住んでいたこともあって小さい頃からよく遊んでいて仲良しで、それで気づけば婚約するに至っていた。
「まぁそうだよなぁ、夏の晴れはきつい」
「ええ」
「けど本格的に暑い時期以外の晴れなら晴れやかな気分になれるからいいよな」
「上手く言ったわね」
「いやそうじゃなく」
「ふふ。冗談よ。言ってみただけ」
そして今日も日射しの下でお茶と軽食を楽しみつつ言葉を交わしている。
「雨の音も嫌いじゃないけどさ、でも、やっぱ晴れがいいよな!」
「そうね」
「毎日晴れだったらいいのになーってたまに思う」
「確かにね」
……と、その時。
「てことで、婚約破棄するわ」
いきなり告げられた。
まさかの言葉を。
「え……」
そんな声をこぼすことしかできない。
「だからさ、婚約破棄する、って」
「えええええ!!」
思わず叫んでしまった。
「どうして!?」
「うるさいほんと声が大きすぎる」
冷えきった視線を向けられる。
その視線は鋭くてまるでこの身に突き刺さるかのようだ。
「ごめんなさい……驚いて、しまって……」
「理由は、飽きたから、それだけ」
「好きな人ができたの?」
「いやだから違うって、そんなのじゃないって、聞けよ」
しかし、本当に、もう……なんということだろう……。
「リーズとはずっと一緒にいるからさ、さすがにもう飽きたんだよ」
「え、ええー……」
「ここまでありがとな」
「一応お礼は言うのね……」
「まぁな」
「……複雑な心境よ」
「そんなこと知るか。関係ない。くだらないこと言うなってメンドクサイ」
こうしてすべてが終わったのだった。
◆
あれから数年。
私は資産家の男性と結婚した。
彼との始まり、それは、アババとの話について聞いてもらったことだった。
私たちはそこから親しくなった。そして他の話もするようになっていって。たくさん喋った、楽しい話を。
そして気づけば特別な二人になっていた。
彼と仲良くなれたのは、ある意味、アババのおかげとも言えそうだ。
そう考えれば、これまでの経験は無駄ではなかったのだと思える。
悪いことだって、辛いことだって、そのすべてが糧となった。そして今の私がいる。笑顔でいられる、幸せを感じられる、そんな私が。
今ならアババに感謝できる……ような、そんな気がする。
ちなみにアババはというと、今は結婚相手を探している途中だそうだ。
しかしお世辞にも順調と言えるような状態ではないそう。というのも、過去に一方的に婚約破棄した、という事実がかなり足を引っ張っているようなのだ。
……まぁ、誰も、そんな前例のある人と結婚したくはないだろうけれど。
それでアババは精神面でかなり追い込まれているそうだ。
だがそんなのは単なる自業自得でしかない。
なんせそれは彼の選択が招いたことなのだから。悪いのは過去の彼。私も、彼を避ける女性たちも、悪いことは何もしていない。
◆終わり◆




