心ないことを平気で言えるような男性とはさっさと離れたかったので、婚約破棄は最高の展開です!
婚約者ルロバードは外面は良いのだが近しい関係の人に対しては高圧的な接し方をするような男性だ。
彼はいつも私に対して心ない言葉をかけてきていた。
容姿や性格を侮辱してきたり。
また、わざとぶつかってきたり物を隠したり、そういったこともやたらと繰り返してくるのだ。
そして何事もなかったかのような顔をしている。
どんなに酷いことを言った直後でも、自分は悪いことなんてしていない、と言っているかのような顔をして。
そんな彼と結婚するなんて……。
でも逃げられない。
さようならなんて言えない。
――と、そんな感じで悩んでいたのだけれど。
「お前との婚約だけどさ、破棄することにしたから」
ある日告げられた言葉。
それは私がずっと待ち望んできたものだった。
「え……」
「はは。驚いた?」
「……そうですね、はい、驚きました」
「まぁお前は馬鹿だからな! はっはははっはっは! そうだろうなぁ! はっはははっはらはぁ!」
確かに驚いた。けれどもそれは悪い意味でのものではない。むしろ逆で。この驚きは良い意味でも驚きだ。こんなありがたいことになるなんて、とか、こんな理想的な展開が待っていたなんて、とか。そういった意味での驚きなのである。
「じゃあな! バイバイ! バイバイバァイ!」
――こうして私たちの関係は終わりを迎えたのだった。
だが悲しさはない。
むしろ恐ろしいくらいの勢いで嬉しさが湧いてきている。
なんせこれは待ち望んでいた展開。
今の状況というのはまさに、夢が叶った、という状況なのだ。
「よっしゃああああああああ!! きたあああああああ!! きたよきたよきたよこれえええええ!! きたよおおおおおおお!! さいっこぉおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!! たまらねぇぜこりゃあぁぁぁぁ!! ひゃっほぅおぉぉぅぅぅぅぅぅい!! さいっこうだぜこりゃあああああ!! たっまんねえなああああああああ!!」
帰宅後、思わず、大声で叫んでしまった。
もう喜びが止められなかったのだ。
これまで長い間もやもやし続けてきた分だけ嬉しさが豪快に爆発する。
ちなみにルロバードはというと、その後少しして勤め先の会社で暴力事件を起こし逮捕されたそうだ。
基本的に表向きは良い人なルロバードだったのに何があったのだろう……、なんて思ったけれど。
ただ、それ以上の興味は持たなかったので、敢えて真相を知ろうとすることはしなかった。
◆終わり◆




