婚約破棄を告げられたあの日からちょうど一年が経ち、私は今。
貴方に婚約破棄を告げられたあの日から、今日でちょうど一年が経ちます。
あの時は泣いていたけれど、今の私はもう泣いてばかりの弱々しい私ではないのです。
貴方はあの日「つまらない女だ」とか「お前みたいな女と結婚したい男なんていない」とか言ったけれど、そんな言葉は何の意味も持たない言葉。なぜならそれは真実ではないからです。貴方は本気でそう思っていたのでしょう、けれどもそれは真実ではありませんでした。
――私を心の底から愛してくれる人はいた。
私は出会えたのです。
私という人間を大切にしてくれる男性に。
だからもう悩まない。
だからもう泣かない。
私は、私を大切にしてくれる人を信じて生きてゆくと決めたから、もう心ない人や言葉へは目を向け続けはしないのです。
どうせ生きるなら前向きに生きられるほうが幸せでしょう?
ですから私はそうやって生きるのです。
悪いことへ目を向けるのではなく、良いことに目を向けて――希望を信じて、歩むのです。
貴方はもうこの世にいないのですよね。
先日聞きました、貴方は嵐の夜に寂しくこの世を去ったと。
それゆえ、貴方に何か言うことはもうできないし、もしできたとしてもしないつもりだけれど。
ただ、あの時の貴方に、今なら笑顔で言い返すことができる――貴方の言葉は間違っている――そんな風に、真っ直ぐ、貴方の目を見て言える気がするのです。
……私、貴方が言ったほど価値のない女じゃなかった。
貴方の言葉はただの刃。
所詮あれは他人を傷つけるためだけの言葉。
現在地を見れば分かるでしょう?
私と貴方のそれぞれの正しさが。
◆終わり◆




