妖精を使役する能力を持っているからといって悪女扱いされるのは不快です。
幼い頃から妖精を使役する能力を持っていた私は、たびたび妖精の力を借りていた。
ただ、それで悪事を働いていたわけではないし、私利私欲のために妖精たちの力を利用していたわけでもない。
才能は人々のために。
幼い頃から親にはそう言われて育ってきた。
だから私は妖精を使役する能力を自分のためではなく他人のために使ってきたのだ。
だが、婚約者となった青年リオールイにはそこを理解してもらうことができず。私利私欲のために妖精を使役していると勘違いされてしまっていて。それゆえ、悪女であると理解され、最初から嫌われてしまっていた。
もちろんこちらも誤解を解きたくて一生懸命説明したけれど、そんな行為には何の意味もなくて。
結局、彼の中の私はずっと『妖精使いの悪女』のままだ。
彼の中の私はいつまでも変わらない。どんなに説明しても、それでも。こういう時は、所詮、事実なんて何の関係もないのだ。彼が思い込んでいることがすべてであり、彼の中の事実だけが事実なのである。
「お前との婚約は破棄とすることにした」
そんなリオールイがようやく婚約破棄を告げてきたのは、婚約から数ヶ月が経った頃だった。
「悪女と結婚するなんて無理だ。だから関係はここまでにする。……さらば、永遠に」
こうして私たちの関係は終わった。
◆
時は流れ、あれから数年が過ぎた。
私は妖精の力を借りて多くの人を助けた。
困っている人、苦難に見舞われている人、悲しんでいたり泣いていたりする人――多くの人に寄り添い、そういった人たちを支援することを続けてきた。
そして国王から表彰を受けて。
後に、貴族の男性と結婚した。
その人は私を悪女扱いしない。
私の能力のことも正しく理解してその上で寄り添い関わってくれている。
だから彼のことは好きだ。
ちなみにリオールイはというと、三回も事故に遭い、それらの時に負った怪我が原因となって先月ついに亡くなってしまったそうだ。
◆終わり◆




