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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 5 (2025.1~)   作者: 四季


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婚約破棄された翌日、知り合いの青年から想いを告げられました。

 婚約者であった男性から心ない言葉を幾つも投げつけられたうえ婚約破棄された、翌日。

 以前からたまに喋ることはあったものの関係性としては単なる知人にとどまっていた青年ラウスから想いを告げられた。


「僕、貴女のことが好きなんです! 実は、ずっと昔からそうでした……でも勇気がなくて言えずにいたんです、今までは。……でも! 婚約破棄されたと悲しむ貴女を見ていたらもう黙っていられなくて。だから言わせてください! 貴女が好きです! 貴女を愛しています!」


 ラウスは真っ直ぐに私を見つめて言ってくれる。


 その穢れのなさに。

 その純粋さに。


 そんなつもりはなかったというのに、次第に心を奪われてゆく。


「交際しませんか!?」

「……あの、すみません、急なので戸惑っていて」

「あっ……や、その、そうですよねっ……本当に……僕はまた、迷惑をかけてしまい……」

「いえ、そうじゃないんです」

「え」

「嬉しいです。気持ちを伝えていただけたことは、とても。感謝しています」


 傷つけられた後だからだろうか? 今はラウスの真っ直ぐな心と言葉に呆れるくらい惹かれてしまう。単純? 愚か? ……簡単に言えばそうなのかもしれない。色々あったせいで私は馬鹿になっているのかも。傷ついたから、弱っているから、手当たり次第救いを求めるように。そんな感じなのかもしれない。


 けれど、彼に心奪われつつあることは事実だ。


 好意を真っ直ぐに向けられて。

 直球な言葉を告げられて。


 ……それで相手を急激に嫌いになる人なんて稀だろう?


 いや、もちろん、状況にもよるけれども。


 まともな関係だとしたら。

 まともな順序だとしたら。


「少しだけ、頭を追いつかせる時間をください」

「あ、は、はい!」


 こうして二人の関係は変わり始めた。



 ◆



 あれから数年。

 私はラウスと結婚し幸せに暮らしている。


 ちなみに元婚約者の彼はというと、あの後職場で壮絶ないじめに遭い心を病んで退職し今は自宅で療養しているそうなのだが担当の医師からは「回復は無理でしょう」とはっきり言われているような状態だそうだ。


 きっと、これまで彼がやってきたことが返ったのだろう。


 良いことをすれば良いことが返る。

 悪いことをすれば悪いことが返る。


 そういうものだ。



◆終わり◆

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