「お前との婚約なんざ、破棄だ!!」勇ましくそんなことを言った彼でしたが……。
「お前との婚約なんざ、破棄だ!!」
婚約者ロバーテはあるパーティーにてそんなことを告げてきた。
……しかもお茶をかけられて。
「俺が愛しているのはリリナだけだ。お前なんて要らない。俺は要らないし、この世界にも要らない。だから! お前はさっさと消えろ!」
「そうよぉ? ロバーテが愛しているのはわたしだけ。貴女なんて、ただ婚約してるってだけでしょう? そんな女、要らないのよぉ。うふふ」
心ない言葉を発し続けるロバーテの傍らには、私の知らない女性が一人、彼にぴったりくっつくようにしながら立っている。
それだけでも驚きなのに。
その女性までもが意地悪そうな顔をしてこちらを見てきているのだからなおさら驚かされる状況である。
「お茶臭い女はさっさと消えればどうだ?」
「そうよぉ、におうわぁ」
終わりとはいつも唐突にやって来るものだ。
今まさにそれを強く感じている。
どんなことでもそうなのだろうけれど、改めて感じる。終わりは予測できないものなのだと。そんな時が来るなんて思っていなくて、そんなことになるとは思っていなくて、けれども終わりというのはいつも突然目の前にぽんと投下されるものなのだ。
◆
結果的に私は命拾いした。
というのも、あのパーティーの夜、パーティー会場だった建物に隣国から飛んできた魔法弾丸が命中したのだ。
それは私が立ち去った後の出来事で。それゆえ私は巻き込まれずに済んだ。その頃には帰路についていたから。しかしパーティー会場にいた人たちは皆一瞬で落命することとなってしまった。結局、あの日のパーティー参加者の中で生き残ったのは私だけだった。
……いきなり死を迎えるというのはどんな気分だろう?
それは私には分からないけれど。
でもきっと嬉しく感じるような経験ではないだろう。
ロバーテも、リリナも、あの夜にこの世界から消滅した。
それはとても不思議な感じ。
けれども二度と会わなくていいというのはありがたいことでもある。
今はただ、運命に感謝しよう。
◆終わり◆




