今日は何の日? 〜私たちの特別な一日〜
「ちょっといいかな」
「どうしたの?」
私フェーチェと夫であるアザンは仲良し夫婦。同じ屋根の下で暮らしているのだけれど、いつも笑顔でいる。まるでずっと前から知り合いだったかのような仲の良さ。
「今日さ、何の日か覚えてる?」
かつて私たちは同じように傷つけられた。
それぞれ婚約者に裏切られたのだ。
それで、お互い、もう二度と結婚なんて考えない、と心を決めていて――けれどもそんな時に二人は出会い、惹かれ合って、気づけば結婚していた。
「確か……私たちが出会った日、じゃない?」
「当たり!」
「ああ、良かった、間違っていなくて」
「覚えてくれていたんだね、嬉しいよ。忘れられてるかもって心配してたから」
「大丈夫、忘れないわ」
「ありがとうフェーチェ」
「こちらこそ、いつもありがとう。感謝しているわ。貴方に出会えて良かった」
それぞれの人生に苦難があった。
けれどもそれがあったからこそ私たちは巡り会うことができた。
第一歩を踏み出せたのも、似たような経験があったからだ。
「じゃあ、アザン、今日は良いお茶でも飲む?」
「いいね!」
「準備しておくわね」
「僕も何かするよ」
「いいのよ、気にしないで。お茶の準備くらいなら私だけでもできるわ」
「けど……」
「心配しないで。大丈夫だから。ね?」
「……分かった。じゃあ僕は僕でできることを探すよ」
私たちはこれからも共に生きてゆく。
希望を信じて。
大切な人と共に。
◆終わり◆




