心ない人間にはいずれ罰が下るのです。……それがどのような罰であるかは私は知りませんが。
「好きだよ、君のこと」
「ありがとう」
「この先もずっとずっと好きだよ、一番、僕の中では君が一番愛しい人、そして唯一の人だよ」
婚約者である彼ツットーリオは何度もそんな風に言ってくれていたのだけれど。
「ごめん、君との婚約は破棄する」
――彼はある日突然そんなことを言ってきた。
それは二人の関係を完全に壊す言葉だ。
そして終焉を告げる言葉でもある。
「え……」
「もっと条件が良くて好きな人ができたからさ、君のことはもうどうでも良くなったんだ」
「本気で言っているの?」
「もっちろん!」
無邪気に笑う彼は気まずさなんて欠片ほども抱えていない様子。
「うん、だからさ、バイバイしよ? 幸せになってね」
こうして私たちの関係は終わったのだった。
あまりにも呆気ないさよなら。言葉を失ってしまうほどに脳が追いつかない。何を、どう考えても、どうしても展開が理解できなくて。こんなことになるなんて、とばかり繰り返してしまう脳は、考えれば考えるほどに馬鹿になってゆくかのよう。
けれども彼とのお別れがやって来たということだけは確かなことなのだ。
ならばそれを受け入れるしかない。
事実を書き換えることはできないのだから。
◆
婚約破棄から数週間、ツットーリオはこの世を去った。
彼は気に入っていた女性に声をかけ続け逮捕されたそう。で、犯罪者として牢屋へ輸送されることとなっていたのだそうだ。
しかしその途中で事故に遭って。
事故が起きたと聞いて救助隊は来てくれたようだが、その時には既に彼は落命してしまっていたそうだ。
……あまりにも呆気ない最期だった。
◆
あれから数年。
私は今、大金持ちの男性の妻となり、屋敷の管理を任されている。
最初は分からないことがたくさんあった。けれども周囲の人たちからの協力もあり多くの困難を乗り越えることができた。そして今では普通のことなら自力でできるようになっている。小さな事件なら自分だけの力でも乗り越えられる、堂々とそう言えるほどに。多くのことを乗り越えて、多くのことができるようになった。
また、夫は深く愛してくれていてしかもいつも優しく接してくれるので、今の気分は最高だ。
◆終わり◆




