「あんたのこと、もう、愛してないんだ」婚約者の口から出たのは、そんな言葉でした……。
「あんたのこと、もう、愛してないんだ」
婚約者ロバートは冷たい目をしている。
そして、その口から放たれる言葉もまた、目つきといい勝負をするくらいの冷たさである。
「だから、婚約は破棄な」
その時はいきなりやって来た。二人の関係が終わる時。これまで築いてきたものが、これまで歩いてきた道が、笑ってしまいそうなほど呆気なく崩れ落ちてゆく。
「ばいばい」
こうして私と彼の関係は終わったのだった。
◆
婚約破棄を告げられた日から一週間も経たず、ロバートはこの世を去った。
彼はその日家の近くを散歩していたそうだ。
すると突然背後から何者かに襲われて。
何かよく分からないもので頭部を殴られ、その一撃によって気絶。
……そして、そのまま死亡した。
犯人が何者か、ということについて、詳しい情報はない。ただ、男性だったらしい、とは言われているようだ。しかし犯人はまだ捕まっていない。否、それどころか、目撃情報すらない。
なぜロバートが襲われたのか。
どうして襲われるのがその日その場所だったのか。
……結局、すべて、謎に包まれたままだ。
ただ一つ確かなことは。
ロバートがこの世を去ったということだけ。
彼は何も得られないままこの世界から去っていった。
悲しいことだ。彼は死んでしまったのだから。死んでしまった人間には誰ももう二度と会えない、そういうもの。ゆえに普通は死とは悲しいものなのだ。
けれども、今回に関しては、自業自得だろう。
彼が選んだ道には幸せな未来はなかった。
ただそれだけだ。
それ以上の意味なんてありはしない。
◆終わり◆




