前々から嫌ってきている婚約者が婚約破棄を告げてきました。〜身勝手なことをするとあの世逝きになりますよ〜
妖精使いの才能を持っていた私は、婚約者アードレーマンから嫌われていた。
そんなに嫌いなら婚約しなければ良かったのに。何度もそんなことを思った。それほどに、彼はいつも心ない接し方をしてきていたのだ。私の前での彼はとことん冷ややかで、まるで悪魔の手下であるかのようだった。
「お前なんてな! 何の価値もない! そんな女を嫁に貰うなんざ、一族の恥だ。よって! 婚約は破棄とする!」
ある朝、いきなり呼び出されたと思ったら、アードレーマンから告げられたのは関係の終焉。
「お前みたいな無価値なやつ、俺の前からさっさと消えろ!」
いつかは来る瞬間だと分かっていた。
ゆえに驚きはそれほど大きくない。
ただ、その時があまりにも突然やって来たものだから、そういう意味では少しだけ驚いたというのも間違いではない。
――と、その時。
「あいつなの! あいつが悪人なの!」
「サイテー男は仕留めるのよ!」
「あるじさまを見下す愚かな男なんて生きる価値なしなしなの!」
私がこれまでに契約を結んだことのある妖精たちが突如大量発生。
「あるじさまを傷つけるやつは……こう! こう! なの!」
「やったれーなのー!」
「みんな! 好きなだけ虐めるのよ! 反省させなくちゃダメなの!」
「やーれーなのー!」
「ボッコボコにするのよー! あるじさまを傷つけるやつは許さないのー!」
その妖精たちの手でアードレーマンは最期を迎えることとなったのだった。
◆
アードレーマンに婚約破棄された事件からちょうど一年が経った日、私は、もう数ヶ月親しくしている資産家の息子である青年と婚約した。
彼は思いやりのある人だ。
だからどんな時も優しく寄り添っていてくれる。
彼に出会えたことは私の人生における最大の幸福……と言っても過言ではないかもしれない。
◆終わり◆




