運命に翻弄されながらも……生きてゆきます。~いつも明るい未来を信じ続けています~
昨夜、婚約者であり隣国の王子でもある彼エンドリオス・ケット・エーリオスは、私との婚約を一方的に破棄した。
その理由というのが、幼馴染みと一緒になりたい、などという極めて個人的かつ私的なもので。
しかもその幼馴染みというのが、私との婚約中も前からたびたびいちゃついているところが目撃されていた印象の悪い女性。
……そんなことをしたらどうなるのか。
誰だって分かることだろう。
簡単なことだ。
けれど彼には分からなかったようで、ゆえに、こんなことになってしまった。
「あやつ……我が娘を傷つけ、雑に扱い、絶対に許さん! こうなったらもう戦争だ! ……ああ、そもそも、前から腹が立っていたのだ。たびたび無礼なことをされて。だから! 我はもう我慢せぬ! ここですべてに決着を……つけよう」
この国の王でもある私の父はしっかり怒ってしまっている。
――そうして二国の関係は最悪なものとなってしまったのだった。
やがて起こる戦い。
愚かな王子の身勝手な行いのせいで訪れた悲劇。
戦いになれば人が傷つく。だから、本当は、戦うという道は避けるべき道なのだ。けれども火種を生み出す者がいるがため避けられず。怒りは戦いを始めさせ、そして、戦いの渦は大きくなってゆく。
――その戦争は半年もかからず終わった。
エンドリオスらが統治している国は強くなかった。というより、エンドリオスの父親である国王も有能でなかったために、軍もまともに稼働していなかったのである。それゆえ、攻められれば抵抗できず。あちらの国はあっという間に降伏するしかなかった。
その後、愚かな王族を批判する民らが立ち上がり、彼らの手によってエンドリオスを含む王族たちは仕留められた。
王子であるエンドリオスはもちろんだが、その父親である国王も、自国民から少しも愛されていなかったようだ。
ちなみにエンドリオスと仲良しだった幼馴染みの女性も王族らと同時に処刑されたらしい。
……と、それはさておき。
そうして生まれた新たな国と、我が国は友好的な関係を築いた。
すべての原因を作ったあちらの王族は死んだ。
ならば私たちは敵同士ではない。
隣り合う国として、互いを尊重しつつ関わることが今ならできる。
……なんせ、民には罪はないのだから。
二つの国の未来は今ここから始まる。
また新しい形で。
また新しい心で。
良い関係を築き、互いを認め合って進めるなら、両国の未来は明るいはずだ。
◆終わり◆




