ねぇ、あなたは覚えている? ~いつまでも幸せなままでいられると思ったら間違いよ~
ねぇ、あなたは覚えている?
あなたがわたしに何をしたか。
どんな風に傷つけたか。
どんな風に泣かせたか。
……ああ、きっと、覚えてはいないのでしょうね。
わたしたちは婚約していた。特別な二人、特別な関係、だったの。確かに。あの時あの瞬間までは。
けれどもあなたは裏切って。
わたしではない女性を優しく見つめて。
そのせいでわたしたちの関係は壊れてしまった……。
あなたがあんなことをしなければ、わたしたちはきっと今も、あの頃のように特別な二人でいたはずなのに。幸せであれたはずなのに。わたしはそんな未来を信じていた。あの頃も、そして今も。あのまま歩んでゆけていたなら、と、何度思ったか。何度願ったか。もう数えきれないほどに。
でも、あの時のあなたは彼女のことしか見えていなかったから、たとえあの時わたしが何を言ったとしても……ここではない場所に二人の関係が落ち着くことはなかったでしょうね。
そしてあなたはこれからも生きてゆく。
己の罪を知らないままで。
穢れた身であることなど知らず、普通の人のように、歩んでゆけると思っているのでしょう。
……でも駄目よ。
あなたは罪を償わない限り普通の幸せなど手に入れられはしない。
他者を傷つけて。
他者を泣かせて。
それで幸せになれるなんて思わないで。
ねぇ、あなたは覚えている?
あなたがわたしに何をしたか。
どんな風に傷つけたか。
どんな風に泣かせたか。
……そうよね、きっと、覚えていないでしょうね。
けれど、忘れていたとしても、あなたの罪は消えない。
いつか必ず天罰が下るわ……いえ、わたしが、この手で……なんてね。
でも、覚悟はしておいて。
いつかは必ずその日が来る。
いつかは必ずその時が来る。
……だから、忘れては駄目よ?
◆終わり◆




