「アルリーネ! 君との婚約は破棄とする!」ある晩餐会にていきなりそんなことを言われ困っていたのですが……?
「アルリーネ! 君との婚約は破棄とする!」
晩餐会にて、婚約者エルデリトーがそんな宣言をしてきた。
彼は鼻息を荒くしている。そして勝ち誇ったように目を見開き鼻の穴まで大きく開いていた。他者から見れば馬鹿丸出しのようか顔になっているのだが本人はそこには気づいていないのだろう、恐らく。そうでなければ人前でこんな恥ずかしい顔はできないはずだ。
「君は俺に奉仕しなかった! つまり、俺の妻になるに相応しくない女だということだ! 君に価値はない!」
「……何を仰っているのですか?」
「俺に奉仕しなかったという己の悪行を悔いろ! と、言いたい」
「奉仕……私はそれをするために貴方と婚約したのではありませんが、なぜいきなりそのような話に?」
「う、うるさい! うるさいうるさいうるさいうるっさいうるるさいさいうるさいさい! 黙れ! うるさいうるさささい! とにかく消えろ! 俺の前から!」
エルデリトーは筋の通らない滅茶苦茶なことを言ってくる。
それで困っていたのだが……そんな時、突然、背後の立派な扉が開いて。
「アルリーネさん、お困りみたいね」
一人の女性が現れた。
女神のような美しい人だ。
「え……」
「わたし、昔貴女に救われたの。だからこれはお返しね」
「あの、すみません、記憶が……」
「気にしないで。そのまま忘れてもらっていて構わないわ。でもお返しはさせてほしいの」
その女性が片手の手のひらをエルデリトーへ向けると、次の瞬間、意味不明だがエルデリトーから出火した。
「え、や、わ、あああ!! わああああ!! わぎゃああぁぁぁぁぁ!! にゃばぁぁぁ!! 助けて助けて助けてタスケテタスケテええぇぇぇぇぇ!!」
エルデリトーは晩餐会参加者の前で恥を晒すこととなったのだった。
◆
あのままエルデリトーとさよならすることとなった私だったが、結果的にはそれによって幸せを手に入れることができた。
というのも、あの時不思議な力で彼に罰を与えてくれた女性とパートナーになることになったのだ。それによって私の人生は大きく変わった。もちろん、良い方向に。
彼女と出会えたことは私の人生において最大の幸福。
そして、その幸福は、これからも私に多くのものを与えてくれることだろう。
◆終わり◆




