来年も貴方と同じ風景を見ていられるものと信じていたのですが……こんなことになるなんて思いませんでした。
「綺麗だな、今年も」
「そうね」
私は今年も親しい彼アンドルとクリスマスツリーを見に来ている。
二人でこの美しい光景を見に来るというのはもはや毎年の恒例行事となっている。
何回こうして背の高い木を見上げたか、分からないほど、数え切れないほど、私たちはもう何度も同じ時を過ごした。
「今年もまた見に来られて良かったわね、アンドル」
「ああそうだな」
「来年もきっと……また見に来ましょうね」
するとアンドルはぱたりと黙ってしまう。
「どうしたの?」
不思議に思って尋ねると。
「あのさ……」
彼は気まずそうに口を開く。
「婚約なんだけど、破棄することにしたんだ」
「えっ……」
「俺ら、いつまでもこんなじゃ駄目だなって思ってさ」
「どういう……意味?」
私たちは婚約している。
だから共に行く未来は確かなものだと信じていた、のに。
「ごめんな。さよなら」
彼はあっさりと私を捨てた。
◆
あれから数ヶ月。
私は何とか立ち直り、高貴な家柄の人から受けている求婚についてようやく考えられるようになってきたところだ。
その求婚は私が婚約破棄された直後に届いた申し出だったのだけれど、その時はまだ余裕がなくて、それでなかなか話を進めることができていなかった。
色々気になるだろうに、早く進展してほしいだろうに、穏やかに長い間待ってくれたその人には感謝したいと思う。
◆
あれから数年。
私はずっと待ってくれていた高貴な家柄の人と結婚した。
おかげで今はとても幸せだ。
彼との縁を得られたことは、私の人生においてかなり大きなことだった。
言葉にすればたった一つの要素でしかないけれど、それが、私を何よりも救ってくれた――そしてそれこそが私を現在という幸せへと誘ってくれたのだ。
ちなみにアンドルはもう亡くなった。
借金を重ねていた女性に騙され肩代わりさせられることとなってしまい、それを苦に死を選んだのだそうだ。
……彼はもう、永遠に、クリスマスツリーを見ることすらできないだろう。
◆終わり◆




