婚約破棄されましたが、充実した日々を楽しんでいます!
「お前はくだらない女だ! よって、婚約は破棄とする!」
婚約者エンベルリッツォはそんなことをある日突然宣言してきた。
しかも婚約破棄宣言だけでは済まず。
「これまでずっと我慢してきた。我慢して、我慢して、お前に付き合ってきた。だが! お前の面白くなさと媚びなさにはもう嫌気がさしきってしまった! ……お前と一緒にいるだけで不快だし、吐き気がする」
そんなことまで言われてしまう。
彼はただひたすらに私を傷つけようとしていた。
明らかにそのような目的で、言葉を選び、言葉を発している。
「さっさと視界から消えてくれ」
「……はい、分かりました」
私たちの関係に幕が下りる。
あまりにもあっさりとした終わりだった。
◆
エンベルリッツォは自らこの世を去った。
彼は自信家だった。にもかかわらず彼が自分から死を選んだのには理由がある。否、理由というよりかは原因となった出来事、か。
彼は私と離れて間もなく好きな人ができて告白した。
けれどもいきなり過ぎる告白だったために「意味が分からない」と言われたうえ断られてしまう――当たり前と言えば当たり前なのだが――常々自分の価値をかなり高く見積もっている彼はその事実を受け入れられなかった。
そしてエンベルリッツォは壊れた。
以降、彼は自傷行為を繰り返すようになり、その果てに死を選んだのだった。
ちなみに私はというと。
今は親が営む店の手伝いをしつつ、趣味に取り組んだり友人と遊んだりと、気ままに楽しく毎日を過ごしている。
人生はとても充実している。
だから過去の残念な出来事のことなんてほぼ気にならないと言っても過言ではない。
◆終わり◆




