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花の呼び出し



 翌日、昼休みにダリアの君と撫子の君から急遽呼び出しがかかった。

 またなにかが起こったのかと身構えて庭園へ行ったけれど、聞かれたのは先日の花会での件だった。


「あれからなにか嫌がらせとかは受けていない?」

「はい。全くなくなりましたわ。ご心配おかけしてしまい、申し訳ございません」


 私の返事にダリアの君は安心したように表情を緩めた。けれど、すぐに笑みが消え、いつもよりも硬い声で「それと聞きたいことがあるの」と話を切り出した。


「本当は犯人に心当たりがあるのではないかしら。貴女が犯人をわかっているのなら、私たちは除名をすることも覚悟しているわ」


 この口ぶりだと、ふたりは犯人が花ノ姫にいると確信しているように聞こえる。おそらく見当がついているのだろう。まあでも、あれだけ取り乱していれば、わかるわよね。


「ダリアの君、撫子の君。相手には私から直接話をしました。現時点ではもうなにもする気はないようですわ」


 撫子の君は「貴女はそれでいいの?」と眉根を寄せて聞いてきた。

確かに嫌がらせをされたのに、犯人をバラすことなく除名すらしないなんて、甘いと思われるかもしれない。けれど、英美李様は花ノ姫にいる以上は、私に逆らえないだろうし、あれだけ思っていた人に拒絶までされていた。むしろ、除名して学院内で居場所を失った方が、後味悪いというか更に恨まれて面倒なことになりかねない。



「もう好き勝手できないでしょうし、私としては現状で満足していますわ」

「そう。貴女が納得しているのなら私たちはこれ以上なにも言わないわ。けれど、なにかあれば相談してちょうだい」

「はい。ありがとうございます」


 先輩という味方がいるのはとても心強いし、あの英美李様と雅様がおとなしくなれば私としては花ノ姫での居心地がいい。


「そういえば、今年の雪花祭で一年生で表彰される候補が決まったそうね」

「まあ。もうそんな時期なのですね」


 雪花祭の表彰かぁ。たしか原作では一年の時は天花寺と瞳。二年の時もそのふたりだったはず。三年のは私は原作未読だから知らないけれど、そこまでやったのかな。

 原作通りなら、今年は天花寺と瞳だろう。


「私が聞いたのは、天花寺悠さん、浅海奏さん、白百合の君、鈴蘭の君だったわ」


 なんと。雅様も候補だとは……。まあ、成績優秀らしいし、表向きは絵に描いたようなお嬢様だもんなぁ。それにしても、浅海さんも入っているんだ。みんなすごいなぁ。私は補習受けていたし、選ばれる可能性はない。



「二年生はおふたりのどちらかに決まりそうですね」


 たしか去年はダリアの君だったはず。けれど、撫子の君も秀才らしいし、候補には入っているだろう。


「どうかしら。けれど、どちらが選ばれても、ダンスの相手は変わらないわ」

「詩央里ってば、また私と踊るつもり?」

「もちろんよ。私のパートナーはあなただけだもの」


 ふたりともパートナーの申し込みはかなり来ているだろうけれど、受ける気はないってことなのかな。まあ、確かに必ずしも異性とパートナーにならないといけないわけでもないんだよね。

 ……別にぼっちだっていいし。寂しくないし。


「紅薔薇の君は? パートナーは決まった? 貴女だったら選び放題なんじゃないかしら」


 撫子の君に「おほほ」と笑いかけて誤魔化しておく。誰からも申し込みが来ていないなんて言えません。只今募集中でございます。


 ふたりと話が終わったので、残りの昼休みはみんながいるであろう第二茶道室で過ごそう。

 そう思って、第二茶道室へ行くとなにやら緊迫した空気に包まれていた。






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