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彼女を救うために

蒼視点です


 水谷川さんの隣に現れた三人に目を見開く。不思議な組み合わせだ。大勢でいるのは夏休みのときに見たことはあったけれど、この三人でいるのは初めて見た。


「弟も一緒なのか。ちょうどいいな」


 東雲さんがウサギのパペットを手にはめながら、にやりとした。彼女は花ノ姫の中でも独特な雰囲気で目立っている。聞いた話によると失礼なことをすると呪われるんだとか。そんなわけあるはずないとは思うけど。


「……ちょうどいい?」


 俺が聞き返すと、窓枠に手をかけた浅海がまっすぐな視線で俺を射抜くように見つめてくる。



「犯人を捜そうと思っています」


 冗談ではなく、本気で言っているのだと伝わってくる。だけど、そんなのどうやって? 浅海に捜す術があるとは思えない。


「君が? どうして俺たちのためにそんなことするの」


 この学院で嫌な目にもたくさん遭ってきたはずだ。姉さんとは仲良くしていたのかもしれないけれど、捜すことによってさらに自分の立場が悪くなるかもしれないのに。


「雲類鷲さんは友達です。それに前から雲類鷲さんに悪意を持って裏で何かをしている人がいるんじゃないかって思っていたんです」


 姉さんに悪意を持っている? 姉さんはこの学院の理事長の姪で花ノ姫。疎んでいる人は少なからずいるだろうけど……もしかしてプールに落ちたことも、伯母さんに画像が送られてきたってことも関係しているのか?


「ふむ。つまり、紅薔薇を陥れようとしているやつがいるってことだな」

「真莉亜たちが本当の姉弟ではないって知っていたのは、私とスミレ、浅海くん、あとは天花寺と雨宮、桐生、久世、それと一緒にいた女の子だよね。他にはいる? 流音は噂で知ったんだよね」

「ああ、そうだな」


 久世と一緒にいた女の子……希乃亜のことか。あのふたりは前々から知っていた。他にも知っている人ならいるけれど、このタイミングなのはなにか意味があるのだろうか。

 俺と姉さんのことを知った人が増えた直後に流れるなんて、普通なら彼女たちを疑ってしまう。だけど、そんなわかりやすいことをする人たちには見えない。……人の本心なんてわからないけど。


「あとは両親と伯母と伯父。大人なら知っている人もいるかもしれないから、両親から聞いているって人もいるかもしれない。でも噂になるんだったらもっと早くなっているはず」

「じゃあ、犯人は絞りきれないね」


 真栄城さんはため息まじりに呟くと、隣で「呪術で見つけ出す」と言い出す東雲さんを苦笑しながら止めた。


「前に雲類鷲さんがプールに落ちたときも、中等部の子はあえて雲類鷲さんを狙って落としていたように見えたんだ」


 プールに落ちた件は浅海を庇おうとして落ちたと聞いていた。けれど、その場にいた浅海本人がそういうのなら最初から姉さんが狙われていたということなのか? それとも突然現れた姉さんが邪魔で落としたのか?


「誰かが真莉亜になにかをしようとしているのかしら」

「確証はないけれど、警戒はしたほうがいいね。浅海くんは真莉亜と同じクラスだし、気をつけて見ていて。なにかされないといいんだけど。あの三人組にも話しておこう」


 ……あの三人組って天花寺たちか。なぜか高等部に入ってから、親しくなっているんだよな。表ではあまり接触はしていないようだけど。


「あの……見当違いだったら申し訳ないんですけど、雲類鷲さんを狙っている人って花ノ姫の方、とかではないですか?」


 浅海の言葉にその場にいたメンバーが息を飲んだ。俺と浅海以外は花ノ姫だ。この三人を疑っているわけではないけれど、花ノ姫の誰かである可能性も低くはないと思う。


「花ノ姫に関して詳しくはないですけど、周りの反応を見ていると雲類鷲さんって花ノ姫の中でも結構上の地位にいますよね?」

「なるほど。今の地位から引き摺り下ろしたいのか」

「紅薔薇はもともとこの理事長の姪ということもあって、花ノ姫の中でも権力を持つ一人だったが、最近は周りからも支持を集めているからな。邪魔に思う花ノ姫もいるだろうな」


 俺らの代の花ノ姫でかなり目立つ存在の真栄城さんと水谷川さんと仲がいいだけでなく、常に一人でいた東雲さんとも最近では親しい。面白くないと思っている人がいてもおかしくはない。


「ダリアの君や撫子の君も紅薔薇を可愛がっているようだしな」


 それは初耳だ。先輩方にも好かれているなんて、姉は俺が思っているよりも交流の幅は広いのかもしれない。


「けど、花ノ姫なんて腹黒い人だって結構いるだろうし、絞りきれないな」


 水谷川さんに悪意を向けていた綾小路さんも結構癖がありそうだし、他にもああいう人がいるんだろうな。流れてしまった噂を完全にうち消すにはまだ時間がかかるだろう。だけど、姉さんを陥れようとしている人物がいるのなら犯人を捜しださなくてはいけない。


「とりあえず、浅海くんは教室に戻って」

「真栄城さんたちは戻らないの?」

「今日の放課後までに少しでも対策を練らなければいけない」


 真栄城さんは一呼吸おいて、携帯電話の画面を見せてきた。そこには<緊急花会のお知らせ>と記載されている。


「召集がかかった。おそらく議題は真莉亜の噂の件。今回の主催者は牡丹の君」

「牡丹の君って……まずいわね」


 顎に手を添えて考え込む水谷川さんになにがまずいのかと聞いてみると、牡丹の君とは現三年生らしい。そして、牡丹の君はかつてダリアの君と会長の座を争っていた人物。姉さんはダリアの君に可愛がられていて、牡丹の君からは疎まれているそうだ。



「牡丹の君にとっては気に入らない真莉亜を貶める絶好のチャンスだわ」






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