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甘いものは正義



 東校舎に入ったところで、瞳が悩ましげにため息を吐いた。


「それにしても早速嫌がらせか。私もその辺りは目を光らせていないといけないかもしれないな」

「どうして瞳が目を光らせるの?」


 きょとんとした表情でスミレが小首を傾げた。その様子に瞳は苦笑してスミレの頭に手を乗せる。


「別にスミレがやってもいいんだけど、やらないだろうし。立ち位置的にも私が妥当なんだろうなって」


 瞳は困っている人がいたら放っておけないタイプなのだろう。

私たちの代の『花ノ姫』の中で瞳が一番常識人な気がする。何か問題が起これば『花ノ姫』という学院の中だと一目置かれている存在である私たちが動いたほうが解決しやすいはずだ。でも、実際『花ノ姫』のメンバーがそんなことするのかっていうと、どうでもいいって感じで放っておく人の方が多いと思う。


 特に片桐英美李や綾小路雅、パペットちゃんなんかは厄介ごとには首を突っ込まないだろう。気に食わない相手になら別かもしれないけど、自分たちに関係のない女子生徒同士の争いごとなんて興味ないってタイプだ。



「でも瞳、あまり首を突っ込みすぎないほうがいいわよ。親身になって話を聞いてあげれるところは瞳のいいところだけど、スミレは瞳が精神的に疲れてしまうんじゃないかって思うと心配だわ」


 珍しくスミレが真面目だ。瞳も驚いているようで口をぽかんと開けて、スミレをまじまじと見つめている。どうしてしまったのだろうか。


「スミレにいい考えがあるの!」

「いい考え?」

「ええ。美味しいものを食べると幸せな気持ちになるでしょう。揉めている生徒にお菓子をあげれば、幸せになって解決するんじゃないかしら!」

「いや、しない」


 瞳はそっけない口調で即答した。

 やっぱりスミレはただの阿呆の子だったみたいだ。そんなんで解決できるわけがない。


「なによなによ! いじめとは、心にゆとりがないから起こるのよ! 甘いものを食べてハッピーサイコーになればいいことじゃない!」

「スミレが思っているほど、女子のいざこざって単純じゃないと思うわよ」

「真莉亜の言う通りだよ。甘いもので解決できる問題じゃない。それにスミレはあまり関わらないでおいた方がややこしくならなくて済むよ」


 そんなことを言いつつも、瞳の場合はスミレが関わるとややこしくなるという理由だけじゃなくて、スミレにはあまり危険なことをしてほしくないんだろうな。

 いじめみたいな他者の歪んだ感情が入り混じる問題にスミレのような純粋なタイプは関わらないほうがいい。でもまあ、万が一にでもスミレが巻き込まれたら瞳が全力で守りそうだ。



「甘いものは正義なのに!」


 不貞腐れたスミレは口を尖らせながら、先ほどお友達と言っていたテディベアの背中掻っ捌いている。どうやらマジックテープでくっついていたらしい。その中から、紫色の飴玉をとりだして食べ始めた。


 甘いものですっかり機嫌をよくしたスミレは鼻歌まじりにぎこちないスキップをして歩いている。


 というか、お友達食料保管庫かよ!

 前々から思っていたけど、スミレの言動が摩訶不思議で仕方なかった。これで普段はいたいけなお嬢様を周囲にばれずに演じているのだからすごい。そういえば、家ではどちらの彼女なのだろう。






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