第十四話(4) 水中大探索……?
「……それは?」
「わかんないんだぜ!」
モモの首にあるのは、大人用のゴーグルのようなもの。
砂漠などに向かう冒険者がつけているものに似ているから、もしかしたらここに探索しに来た人が落としちゃったやつかな。
とりあえず陸に上がってから見てみようか、ということで、俺たちはテントへと戻ることにしたのだった。
「カイン、これすごいな!」
すでに陸にはアゼルも戻っていて、俺を見るなり水中服を指差しながら興奮気味に声を上げていた。
たぶんこのあと、アゼルだったらスキルで作るだろうな……と思っていたら、すでに大量の水中服が作られていた。
どうやら水中服に感動するがあまり、テントに戻ってくるや否や、手持ちの素材をフル活用して人数分作り上げたらしい。
「あとで調整だけしておいてくれ」
「行動が早くて助かるよ」
そもそもアゼルはたしか、ここに素材を採りにきていたはず。水中服を作ったとなると、完全にマイナス収支になるんだけどいいのかな……
そう思ってアゼルを見たが、とても楽しそうだったから、言わないでおくことにした。
「そういえば、モモがゴーグル見つけたんだよね」
「だぜ!」
テントの前のたき火でひと息つきながら昼食を終えると、話題はモモの発見したものになった。
パッと見ではただのゴーグルで、目を覆う2枚の黒いガラスと、それを繋げる革、そして後頭部にも革がありサイズ調整できるようになっている。
あまり見ないデザインだけど、どこかの鍛冶屋か防具屋が作ったのかな……
そんな考えは、モモの首から取るために手に取った瞬間に消えた。旧文明の遺物だったからだ。
すぐに調整スキルをかけると、ゴーグル全体に回路が走り、眉間の革の部分に魔法陣が形成されている。
魔法陣が少し壊れていたから一緒に修理すると、ガラスがほのかに緑色を帯びた気がした。
「暗視の効果があんのか!」
「へぇ~! ずいぶんなお宝じゃん」
ベルナーが目を見開いて声をあげ、ついでジェシカも目をきらめかせる。
「旧文明の遺物だから、いったんはアンさんに渡さないといけないからね」
そう言いながら、俺は効果の確認のためにゴーグルをつけた。
「ん? …………お、おぉ!」
着けた瞬間は視界が暗くなるだけだったが、すぐに緑色の線で辺りの光景が映し出されたかと思うと、どのくらい離れたところに何があるかというのが表示された。
目の前にいるベルナーたちもそうだが、砂でできた一本道の向こうのほうに表示された「次のエリア」という文字。
そして少し下のほうを見ると、海中と思しきところに「旧文明の遺物」というマークがいくつか表示された。
見たいものを念じるとそれ以外の表示は消える……という便利な機能まであった。
俺はゴーグルを外しながらベルナーに手渡しつつ、その機能を伝える。ベルナーはそれを身に着けると「すげえっ!」と感嘆しながら、辺りを見回しはじめた。
「アゼルさ、このゴーグルを複製できるだけの素材ってある?」
「ふん、僕を誰だと思ってるんだ?」
珍しいものが目の前にあるのに、いつもみたいに興奮していない彼を不思議に思いつつ、そう問いかける。だってこれ、あったほうが絶対便利だもん。
ダンジョンの外で使えるかどうかはわからないけど。
すると、アゼルは自信満々に胸を張ると、自前のマジックバッグの蓋を開けて俺に見せてきた。
「水中服の量産で、素材は使い切った」
したり顔ですっからかんの中身を見せつけられ、俺は「そうだ、こいつ計画性がないんだった」と思い出したのだった。




