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第十四話(3) 水中大探索……?

「すごい! 着てると着てないとじゃ、大違いだ!」


 翌日。昨日見つけた水中補助用の服――水中服と名付けた――に身を包み、水中探索を始めた俺は、腕や脚が嘘のようにすいすいと動くのに興奮していた。

 ベルナーの許可をとって水中服に補助をかけたことで、だいぶ動きやすく、そして疲れにくいものになっていた。

 そもそもの効果としては、四肢の動きを助けつつ水圧のせいで減る体力を減らす、というものだった。

 調整スキルをかけたことでその効果を倍以上に増やしつつ、表面のざらざらしたサメ肌も強化しておいたので、水中の動きが水中服が無いときよりも倍以上早くなっている。


 ……まぁ、それでもベルナーよりは遅いから、俺がもともと遅かっただけなんだろうけど。


「はしゃぎすぎて、結局昨日みたいに疲れ果てちゃ意味ねえからなー」

「わかってるよ。でも、少しくらいこの万能さを堪能させてくれたっていいじゃん!」


 仕方なそうに肩をすくめるベルナーを視界の端に捉えつつ、俺は口を尖らせる。

 とはいえ、ベルナーの言うことももっともだ。

 それに昨日の探索では、広大な海の1割も探索できていない。このまま俺が遊んでたら、いつまで経ってもこのダンジョンから出られないのだ。


「その分旧文明の遺物を探索できるのは、ありがたいことだけどね――っと」


 そんなことをぼやきながら魚を避けつつ、辺りを観察する。

 海底に広がる砂利や石をじっと見つめ、違和感がないかどうかを見つけようとするが、そんな簡単に行くものでもないようだ。

 何かあるかも、と思って石をどかしても、あるのはその下にいる石、ときどき蟹。

 水中服のおかげで昨日よりも格段に動けてはいるけれど、なかなか戦果は芳しくない。

 そして時たま起こるのが……


「ぶへぇっ!」


 水中を移動中、顔面が勢い良く何かにぶつかる。

 しかし目をかっぴらいてもそこには何もなく、ただ海が向こうに続くのみ。しかしそこから先はいけないのだ。


「カイン、大丈夫か~?」

「大丈夫……さっきと同じ~……」


 ベルナーの心にもこもっていないような心配の声に、こちらも気だるげに返す。もう何度も遭遇しているから仕方ないとはいえ、もう少し心配してくれても良いとは思うんだけど。

 この海には、見えない壁が存在するのだ。


 というのも、陽の光が燦燦と降り注ぎ、広大な大海原が広がるエリアとはいえ、元々はダンジョンの一角にすぎない。

 この海も、しょっぱい水ではあるが、厳密には海ではない。

 海の向こうに見える陽も、向こうのほうに飛ぶ海鳥も、遠くに見える山々も、海の中に続く砂利や石も、ある一定ラインからはまやかしに過ぎないのだ。


「いたた……まったく……行けないんだったら、もう少しわかりやすくしてくれてもいいじゃん!」

「ま、そのおかげで意外と探索範囲が狭くて助かってるんだから、良いじゃねえか」

「そういうものかな……?」


 首を傾げつつ、そんなことをしている場合ではないので探索を続ける。


「そういや、今回は海底に調整スキルは使わねえのか? ほら、このダンジョン入ってすぐんとこにあったジャングルのときみたいに」

「あー……」


 とはいえベルナーもちょっと飽きてきているのか、探索し始めたときよりかは会話が弾む。


「できなくはないし、実はもうやったんだけど……」

「だけど?」

「この海の石とか岩とか砂利とかって、1個1個全部に回路があるみたいでさ、調整スキルで回路を見ようにも、ありすぎてまったくわからないんだよね」


 視線は海底に投げながらそう言うと、「ほ~」と残念そうな声が聞こえた。


 ……あんまり興味なさそうだ。それとも疲れてるのかな。


 そろそろ一旦休憩入れようか、と言おうと思いベルナーのほうを見やる。

 すると、俺のそばで地面を掘っていたモモが何かを首に巻いて、こちらに泳いできた。


「見つけたぜ!」

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