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Vtuberの陰キャとギャルが百合する話  作者: 二葉ベス
第5章:いつものように幸せな毎日
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第65話:赤の依頼。我、修羅に入る!

 青原の前ではあーやって強がりは言ったものの……。口座の残高を見て1つため息を付いた。

 最近Vtuber関連で出費することは多かったにせよ、まさか貯金していた分をすべて持っていかれているとは。

 バイトはしているけれど、それを上回る出費、というかパソコンのローン。

 分かっていたよ、このままだと最推し兼最愛の人である音瑠香ちゃんに何もあげることができないのだ。


「……依頼費が、大体5万。特急作業はご相談次第。かー」


 もはや依頼するのは3度目であるにか先生。

 でも今度のはあたしのためではなく、音瑠香ちゃんのためのお買い物だ。何も渋る必要はない。ないのだけども……。

 さすがのあたしも5万もの大金を軽々しく投げられるレベルのお金を持ち合わせていない。

 大体バイト代1ヶ月分。その1ヶ月分を捻出できるだけの財力も今はないんだ。


「はぁー。どーすっかなー」


 バイトの休憩中にスマホとにらめっこしていたが、飽きて天井を仰ぐ。

 今まで通りじゃダメだ。この数週間、音瑠香ちゃんの1周年までになんとかお金を工面しなきゃ……。


「おはようございまーす……」

「おっ、蔵前さんおはようございまーす!」

「今日も眠そうっすね!」

「そりゃあ……ふあぁ……。朝までゲームしてたし……」


 バイトの先輩がやってきた。先輩からお金を借りる? いやいや、流石に無理っぽくない?

 このいかにもボロボロみたいなアルバイターにそんな無慈悲なことができるわけがない。

 ゲームみたいにポンポンお金が稼げればいいんだけどなー。


「赤城ちゃんは休憩中?」

「はい! て言っても、ぶっちゃけ全然休憩できてないですけどね」

「なんか悩み事? おねーさんが聞いてあげよっか?」


 そう言って仕事前の暇つぶしをあたしでしようとしているのではないだろうか? とか考えなくもない。蔵前さんは仕事が嫌だからアルバイターしてるとか、昔言ってたっけ。

 プライベートはよく分からないけど、言葉の端々から察するに多分ゲームしたり惰眠を貪ったりしているのだろう。

 声は女性にしては低くて結構イケメンなタイプなのに。配信者でもすればいいのに。


 まぁこういうことは一人で考えていても、さほど問題は解決しないのは分かっている。だったら頼りない蔵前おねーさんにでも話して、ちょっとはスッキリさせることにする。


「実は今度友だちの誕生会みたいなのをするんですけど、それにイラストを贈りたいと思ってて」

「へー、好きなキャラをバースデーイラストにーとかやるね~」

「あはは、まぁ……」


 推しキャラ、というかその本人なんだけどね。へへっ。


「でもイラストを発注するにもお金がなくって……。先輩とか友だちにお金を借りたりはしたくないので、どうしたもんかなー。って」

「あー。金銭面かぁー。あ、ウチは出さないからね!」


 分かってます。だから借りたくないって言ってるんじゃないですか。


「例えば春を売るとか」

「絶対やりません」

「えー、巨乳ギャルとあれそれするとかよくない?」

「……好きな相手には初めてを届けたいんで無理です」

「初心ーーーーーーーー!!!!」


 前から思ってるけど、このグイグイ来る感じがちょっと苦手だ。

 なんというか。心がちょっとおっさん臭い。その点青原はそんなこと関係なしに引っ込んでくるから掘り起こし甲斐があるというか。安心するんだよね、やっぱり。


「冗談はさておき。無難なのはバイトを増やすとかじゃない?」

「……まぁ、そうなりますよねー」


 実はそのアイディアは最初に考えたことだ。

 短期のアルバイトなら即日でお給料が手に入る。これをどんどん重ねていけば、高校生とは言えども5万ぐらいはとりあえず稼げるだろう。これと次の給料日を待てば、ギリギリ納品物と一緒にお金を払うことだって夢ではないと思う。

 問題は青原の、音瑠香ちゃんの配信が見れなくなるということ。

 一緒に帰る時間もなければ、夜間仕事をすることで配信自体が見れなくなってしまう。


 今の満足と、未来のプレゼント。どちらを天秤にかければいいか。悩んでも悩んでも、答えは出なかった。


「お金を稼ぐなんて、簡単なことじゃないからね~。ウチだって何もせずにお金稼ぎたいわ~」

「まぁ、なんというか……。好きな相手なので」

「ふぅー! 普段はそんなこと言わない赤城ちゃんの好きな人か~! 青春してるね~!」


 言わなきゃよかったかもしれない……。

 でも言葉にしちゃったのでどうしようもないやつだ。


「そっかそっか~。じゃあ今が頑張りどきじゃない?」

「……どうしてそう思うんですか?」

「好きな相手だからこそ、自分の頑張りを自慢したいじゃん! キミのためにウチはこれだけできるんだぞ~! ドヤッ! って言ってトゥンクよ」

「ふぅむ……」


 確かに。それは一理あるかも。

 自分のために何かをやってくれる相手って貴重だ。それもお金を払ってでもやってくれる相手は特に。

 あたしもスペチャもらったら嬉しいし、それが好きな人だったらなおのことだ。

 …………。なんとか両立したかったけれど、これはもう覚悟を決めるしかないじゃん!


「気に入った感じ?」

「もちろんです! あたし、覚悟決めます!!」

「よしよし! じゃあその調子でウチの分の仕事もやっといてー」

「それは蔵前さんがやってください」

「うえー、ケチー」


 よし。まずはにか先生に相談して。そしたら今度は稼ぐ準備をして。なんとか調整してもらう。

 特急作業でいくらかお金を持っていかれることも考慮しないと。

 赤城露久沙、これより修羅に入る!

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