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Vtuberの陰キャとギャルが百合する話  作者: 二葉ベス
第5章:いつものように幸せな毎日
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第63話:青の進学。陰キャにクラス替えは、関係ある!

「はぁーーーーー…………」


 最近、わたしは学校にもいい加減慣れてきたし、話す相手も増えたし、もうこれは陽キャなんじゃないのか?! って自分で自分を誇張表現することがあった。

 いやだってさぁ、あのクラスカーストでもトップクラスで、容姿も勉学も性格のいい女といい感じの関係になってさ、ついでのように友だちになった(?)星守さんだっているんだから、わたしもカーストトップの女ってわけ!

 上から下々の者を眺めるのは気持ちいいどすな~~~!!! ほーっほっほっほ!!!


 なーんて、そこまでは思わないまでにせよ、ちょっとはリアルが充実しているもんだと思っていたんだ。

 陰キャ、というより普通の、一般人よりちょっと下ぐらいのオタクぐらいにはなってたって。

 でもこのイベントで一気に覆るかもしれない。


「クラス替え……」


 学年が変わることによって、行われる謎の行事。

 一説には優秀な人と無能な人を選別して、クラスの学力の差を開かせる、みたいなクラス替えもあるとかなんとか。

 本当か嘘かは分からないけど、創作の上では頭がいい人がトップカースト。バカはみかんの段ボールを机にして勉強させられるというラノベもある。

 あぁ、恐ろしや。だって、これが本当だったら頭がいい赤城さんと、頭の悪いわたしは離れ離れに。

 そうなったらわたしは誰と話せばいいの……?


「……もう登校拒否してしまおうかなぁ」


 でもそれじゃあ悪目立ちして本当に友だちを作ることも出来ず。

 赤城さんともいい感じだったけど、だんだん疎遠になっていって……。

 わたし、ぼっちに?


「くっ! ぐぉおぉぉぉぉぉぉ!!!!」


 わたしは学校への通学路を1歩ずつ踏んでいく。これは未来への前進! ぼっちにならないためのぉぉぉぉおおおおお!!!!


「何あの子……」

「かわいいのに奇声あげながら学校行ってる。草」


「…………」


 無口で普通に学校に行こうと思います。

 それが正しい。今ので心が傷ついたからイヤホンを取り出して、なにか音楽でも流そう。

 イヤホンは外界から自分を遮断してくれる素敵なアイテムだ。陰キャにはこれが必需品!


 お気に入りのアニソンを聞きながら歩く通学路は、そこそこ気分がいい。

 それは不安交じりの期待が学校にあるからだと思う。

 3年生だから進学のことも考えなきゃなんだけど、それよりも赤城さんとどうにか一緒になれないか考えている。

 やけにこだわるじゃん、と言われたらそれはそうと言わざるを得ない。

 けど、わたしにあんな言葉を口にしてくれる人を雑には扱いたくないし。

 ……それに。わたし自身の答えもまだ見いだせていない。


 結論から言えば、わたしは多分赤城さんのことが好きなんだと思う。

 でもこの感情を友だちとしての物なのか、恋人として想っているのかを理解できないんだ。

 何せ友だちも恋人も、どっちもいたことがない。レモンさんとかは近所のお姉さん的立ち位置だと思うし、にか先生に関してはそれはもう師匠というべき相手。

 だから赤城さんと一緒にいれば、その答えが分かるんじゃないかなって、思ってたんだ。思ってたんだよ!!


「何がクラス替えだ、ちくしょー」


 カミサマが本当にいるなら、なにとぞ。なにとぞ赤城さんとの間を取り持ってほしい!!

 こう、クラスが同じであってほしい! でないとわたし死んじゃうし!!


「……おっ、青原ー?」

「カミサマ仏様えーっと……あと何とか様お願いします……」

「なんかおもろいことやってるし」

「あ、え?! 赤城さん?!」


 びっくらこいたところで赤城さんが「よっ」とあいさつしてくれたので、わたしもそれに対しておはようございますと口にする。

 うわ、恥だ。このまま地面を掘って埋まりたい。そこでわたしを埋没してほしい。この恥とともに。


「で、何してたん?」

「あー、えっと。……クラス替え、どうにかなんないかなぁ、と」

「えっ! 青原もあたしと同じクラスになりたいの?!」


 こ、言葉にされるとなんだかこっぱずかしい。

 こういう時わたしは大体「いや、違いますし。ただ友だちがいないだけですし」ってネガティブに返答するんだと思う。

 てかすでにしていた。我ながら素直じゃないなぁ、と思うが、赤城さんの前だと何故だか本音を言えないんだよなぁ。なんでだろう。


「えぇ~、恋人はいるのに~?」

「……ん?」

「んっ! ほら、あたし」

「……もしかして、恋人ごっこの件、まだ続いてます?」

「もち~」


 前言撤回。このギャルだから天邪鬼になるんだ。大体冗談で動いているような相手に、どう素直になれというのか。試しに今度素直に返事するDAYでも作ってやろうか。

 その時は、自分の死を覚悟するか、隕石が落ちる3日前ぐらいにしたい。


「だったら一緒に見ない? あたしも実際怖いし!」

「……赤城さんにも怖いものがあるんですね」

「当たり前っしょ! 辛い物とか、辛い物とか」


 それは痛いものだから怖いのでは?


「だって気が向いたときに青原におはよ、って言えないし! 好きなんよ、青原におはよーって言うの!」

「……そ、そうですか」


 いきなりそんな愛してますよセリフ言われると、結構困るんですけど……。

 耳がちょっと赤くなってきた。なんか、してやられた感じで腹立つ。

 けど、嬉しいのは、まぁ……。そうですけども。そうなんですけども!!


「お、ほら着いたよ、学校!」

「は、はい……」

「手ー繋いでってあげるから、っさ!」

「あっ……」


 それでも、意気地なしのわたしの手を引っ張って励ましてくれる。

 わたしも、あなたのそういうところが……。す、す……。


「こういう時自分の苗字があ行なのマジ助かるわー!」

「…………」


 薄眼で左上の方を見る。青原も赤城も同じあ行で、隣同士のはずだ。

 だからわたしの名前を探せば、おのずと……。


「おっ! あたしが出席番号2番目だ!」

「わたしは、1番目、ですね……」

「やりぃ! 今年もよろしくね、青原!」


 心の底から嬉しいけど、思わず口に出してしまったらまた天邪鬼が出てしまう気がして。

 だから手だけはぎゅっと握って、そこで喜びを示した。


「はい、よろしくお願いします。赤城さん」


 手を繋いでるときは、1人じゃなくて、2人になって。

 その空間はわたしにとって、心を潤すオアシスのような幸せ空間なんだと、思う。

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