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Vtuberの陰キャとギャルが百合する話  作者: 二葉ベス
第4章:年始のような計画する毎日
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第61話:赤の贈物。音瑠香の新衣装お披露目会

 あたしの初お着替え配信は無事に幕を下ろした。

 そういえば、と思って申請していた収益化が無事が通ったこともあり、実質収益化記念配信となってしまった。メインはあたしの新衣装なんだけどなー。


 というか、あたしはVtuberという一つの文明を舐めていたかもしれない。

 この世の中には企業系のVtuberが存在する。そう、お金で雇われて、もしくは契約されて配信しているプロのライバーだ。

 その収入源は何かって言われたら、広告費とかそういうあたしには全然分からないものが裏で動いているのだろう。だったら表では何が動いている?

 その答えはこれであった。


「記念配信で5万スペチャ……」


 ど、どうやらあたしの配信には石油王がいるのかなー、あはは……。

 ……スッー。はぁ……。嘘でしょ。あたしは趣味と音瑠香ちゃん目的で配信しているような人間だ。取り柄があるとすれば、Vtuberに向いているコミュ力ぐらいだろう。

 それなのにこ、この金額のお金が動いてしまったことに、かなりの動揺をしていた。

 あたしの1か月のバイト代の4/5ぐらい稼いじゃったんだけど……。


 なるほど。これを見たらみんなVtuberになりたがるわけだ。あたしだって「ワンチャンVtuberでくっていけね?」って言えそうなほどだ。世の中は全然ちょろくはないんだろうけど、ちやほやされながら、投げ銭されてリスナーのお金で生活していく。

 考えれば考えるほど、悪くないんじゃね? って思っちゃうーーーー!!!


 いやダメだ。あたしは音瑠香ちゃんのモノ。だからこのお金は全額音瑠香ちゃんへのスペシャルチャットとして換金して……。

 いやいやダメでしょ! これはあたしを応援してくれた人がくれたお金! だからこれを懐に収めて……。


「てか、これ扶養とかどーなんの?」


 世間で聞く確定申告って、結局このあたりのお金から計算されるとか聞いたことがあったようななかったような。

 うわ、めんどくさっ! 気軽に収益化なんてするべきじゃなかったかも。

 とりあえずしばらくの間はYItubeのサイトに保管できるみたいだし、様子見しよう。親にも相談! よしこれ大事!


「そんなことよりも、早く始まらないかなー」


 配信が終わった15分後。なんと音瑠香ちゃんがあたしに合わせるように配信を始めるそうだ!

 なんだよもー! あたしと一緒に新衣装公開すればよかったのにさー!

 リスナーの間でも「あれ新衣装じゃね?」とか「スカートだと?!」とかめちゃめちゃ補足されてるし、隠す必要もないと思うんだけどなー。試しにDMで聞いてみても「オキテさんにだけは絶対教えない」の一点張りだ。

 何故だ。何故なんだ……。にか先生にも聞いてみたが「知っているが口止めされている」らしい。どこまでも秘密主義な、ぐぬぬ……。


「まぁでも、今日の配信見ればすべて解決、か」


 いったいどういう心境で新衣装を描いたんだろうか。

 やっぱりパジャマ on エプロンがよくないと思ったから?

 それともあたしの告白をきっかけに、何かが音瑠香ちゃんの中で変わったのか。

 分からない。分からないけれど。彼女にとっていい変化だといいなー、と思う。

 あたしのことは、さておきとして……。


 配信画面が切り替わり、OPの待機画面へと移動する。

 布団で寝ている音瑠香ちゃんのデフォルメ? ミニキャラ姿がとても愛らしい。

 この姿が見たくて待機画面からわざわざアーカイブ見ることもあるしなー。音瑠香ちゃんはセンスの塊だ。さすねる。


「まだかなまだかなー!」


 わくわくしながらコメントを打つ。

 最近はもうオキテのアカウントでしかコメントしてない。露草のアカウントはあくまで今までのあたしだったと思えば、使わなくなったのも納得かもしれない。


 そうして画面を眺めていると、トランジションが流れていつもの雑談画面と、今まで通りの衣装の音瑠香ちゃんが表示された。


『こんねる。バーチャルいつも眠たい系Vtuberの秋達 音瑠香です。今日はいつも以上に眠い』


:こんねるー!

朝田世 オキテ:こんねるーーーーーーーああああああああああ!!!!!好きぃぃぃぃぃぃ!!!!

:こんねるー

:草

緑茶レモン:こんこん

:こんねるー! 今日もオキテちゃんがあらぶっとる


 だって今日はいつも以上に眠いんだって!

 まぁ確かに春休みに入ってから連絡しても、午前中に起きていることがあまりない。

 もうそろそろ新学期だっていうのに、そんなんで大丈夫か秋達音瑠香。


『えー、まぁ。今日は……。なんの配信だっけ?』


:え

:新衣装配信じゃないの?

:新衣装と聞いたんですが


『え、なんでみんな知ってるの? フツーに秘密にしながら告知したのに』


 いや、あれは誰だって分かるでしょ。他のVtuberに疎いあたしでもすぐに分かってしまったんだけど。こういう天然っぽいところがあるから、音瑠香ちゃんは見てて飽きないんだよなぁ。苗字は秋達(飽きたし)、なんだけど。


:むしろなんでバレないと思ったw

朝田世オキテ:バレバレだよ!

:シルエット普通に違ったし

:秋達くんさぁ……


『えー、ごほん。あはは……。じゃあ早速新衣装に着替えようかなぁ。あーでももうちょっともったいぶった方がいいかな』


:グダグダ

:この計画性のなさが音瑠香ちゃんって感じ

:ワイらと雑談したいんか?


『いや、別に。雑談したいとかそういうことは思ったことないし。ただちょっとは引き伸ばしたいなーとかしか思ってないし』


:ツンデレ

:かわいいですね、音瑠香

朝田世オキテ:っぱ秋達音瑠香なんよなーーーー!!!

緑茶レモン:相変わらずグダグダなんだよねぇ


『あー、はい。分かりました! さっさと着替えてきます!』


 あぁ、怒っちゃった。

 まぁ怒った内には入らないだろうけど、かわいい扱いされたのが結構照れてしまったみたいだ。

 いつもあたしがいじってるのと同じ反応だし間違いない。


 画面端にはけた音瑠香ちゃんは、画面外でお着替えをしたのだろう。

 配信画面に戻ってくると、おそらく新衣装らしきフォルムが表示された。なおものすっごく小さく。


『はい、新衣装です』


:ちっちゃww

朝田世オキテ:ちっちゃwww

緑茶レモン:ちっさwww

:どこ

:音瑠香ちゃん豆になっちゃった


『ふははは! これではわたしを視認できまい!』


朝田世オキテ:ちっちゃすぎてつぶしちゃうかも


『……じゃあ大きくなりますね』


 あたしがこうやって反応した途端そんなこと言っちゃうなんて、なんとまぁかわいい。というか素直じゃない。

 徐々に、徐々に大きくなる音瑠香ちゃんのモデルが見えてくるにしたがって、今までの彼女では少しありえないようなかわいらしい衣装が出てくる。


『あ、あはは……。こんなんなっちゃいました』


:あ、かわよ……!

:スゥ―――――

:かわ……っ!


「ワンピースだったかーーーーー!!! めっっっっっっっっちゃかわいい!!!」


 鮮やかな青いロングの髪の毛はそのままに、すらっとした手足を包み込むようなオーバーサイズのワンピース。腹部にベルトを着けて上部の布をたるませているのだろう。それがかえって印象通りの気怠さが感じられて。

 目元だってダルそうに半開き! でも口元はスライムみたいにゆるいし、笑えばめちゃくちゃ優しい笑みを浮かべてくれる。なんだこいつ?! 神か?! 神だったわ!! 作画最強イラストレーターだったわ!!


『まぁ、なんというか……。どう?』


:よい……

:あかん! そんな顔で微笑まれたらガチ恋してまう!!

:清楚すぎんだろ!!

:あーーーーーーーーーーー死

:オキテちゃんの間に挟まってしまう!! ダメだ、動くな俺の身体!!

:なんでスペチャ投げれんの?


 か、かわいーーーーー!!! って昇天しそうになってたけど、その前にもう一つ気になるモノがあった。

 三日月型のヘアピン。見覚えがある。なんというか、クリスマスの時に。


朝田世オキテ:そのヘアピン、あたしが渡した奴……?


 モデルがぴくりと反応すると、瞳を閉じる。

 思い出に浸るように、リアルではゆっくりと思い出の品を撫でているように優しい時間が流れた気がした。


『まぁ。……はい』


 そ、そっか……。そっかぁ! もう、なんというか。律儀だなー! このこのこのー!!

 そんなにあたしがあげたプレゼントを大事にするなんて、思いもよらなかったじゃん。

 はぁ、好きだ。常に変わらぬ気持ちがさらに高まる。この女は本当に……っ!


 それ以降コメントをしていたけれど、ヘアピンが目に入ってずっとニヤニヤしてた気がした。

 はぁ……。新学期、どうやって顔合わせればいいんだよ、ったくぅ!

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