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Vtuberの陰キャとギャルが百合する話  作者: 二葉ベス
第4章:年始のような計画する毎日
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第60話:赤の驚愕。友達以上恋人未満

「……え、なんだこれ」


 それは青原産キャラデザインの新モデルを受け取った数日後のことだった。

 調整も終わったし、さてそろそろお披露目をしようかなー、と告知をしようとした時にそれは現れた。

 真っ黒なシルエットに背景は音瑠香ちゃんのテーマカラー。そして???と銘打たれた謎のつぶやき。


 一瞬「大切なお知らせ」が頭をよぎるものの、昨日も普段のように笑っていた青原にそのようなことはないと思いたい。あの子のことだから隠している可能性もあると思うけども。

 とは言え、この真っ黒なシルエット。あたしにも見覚えのないシルエットだった。


 こういうのって大抵新衣装の告知だったり、モデルバージョンアップのお知らせだったり。そういうのが該当される。

 そして恐らくこれは前者である。


「マジ……?! 音瑠香ちゃんの新衣装?!!!!!!!」


 驚きすぎて思わず叫んで隣から壁を叩かれてしまった。

 ごめんお母さん。でもそうじゃないの。今あたしは歴史的な瞬間にいるの!!

 すぐさま拡散&いいねをして、すぐ返答。


「『新衣装?! マジ?!!!』……いや、こういうのって画像で匂わせてるし、隠すか普通」

「じゃあ『な、何だこの謎のシルエットは……っ!!!!』明らかに動揺してるじゃんあたし。ウケる」


 早くしないと。音瑠香ちゃんのファーストコメントはあたしが頂きたいのに。

 えー。っと。まぁなんというか……。


『ワカンナイケド、タノシミ!!!!』


「急にアホっぽくなったな、あたし。そーしんっと」


 ちなみに何も聞かされてないからガチで何かは分からないけど、このフォルムは恐らく新衣装だ。だってあたしがよく知っているのはパジャマの上にエプロンだ。つまりズボンを着用している彼女の姿だけ。

 でも今回はなんというか……。スカートだ。明確に見えるロングスカートは彼女の奥ゆかしさと陰キャらしさが合わさった代物とも言えよう。

 そして上半身は半袖かなこれ。ってことは夏衣装? え、ちょっと早くない? もうすぐ春だよ?

 髪型はいつも通り。安心するけど、それしか見えてこない。


「むむむ……」


 気になって夜しか寝れない。朝起きたら青原にでも連絡してみようかな。

 あたしも告知の画像を投下すると、そのままベッドに入り睡眠を取るのだった。


 ◇


 翌日。学校へとやってきたあたしは先に来ていた青原に昨日の件を聞いてみることにした。


「昨日のアレ、なに?」

「……。秘密です」


 え、何その可愛い反応。

 ニヤッて笑ったと思ったら、人差し指を口元に置いて、秘密。って何この子。可愛すぎでしょうが!!


「えー! あたし気になんだけどー!!」

「ダメです。これは皆さんに向けてのサプライズなので」

「相方のあたしにも言えないことなん?」


 ここであたしもずるいことをしてみる。

 少し身を乗り出したかと思えば、ちょっと制服の裾を引っ張って甘えた猫なで声で言葉にしてみた。

 我ながらあざといことをしていると思うが、だって気になるし。上目遣い+猫なで声+袖引っ張りぐらいしたら、男なんかイチコロでしょ。相手は女の子だけど。


 案の定目を背けた青原。あらーん? ちょっと耳赤くなってるんじゃないっすか? ん?


「そ、それでもダメです。サプライズなので」


 でもその答えは頑なに『サプライズ』。これはもう引き出せなさそうかなー。

 1つため息をついてから普通に離れた。あたしにもそこまで隠したいというのであれば、無理に暴こうとするものでもないだろう。


「あ、えっと。そうだ。モデル、どうでした?」

「さいっこう! みんなにも見せたげたいわまじで!!」


 出来上がった新衣装デザインを見て、あたしは感涙したね。

 まさしくあたしが想像していた朝田世オキテ像がくっきりと見えた気がするもん。

 初期衣装はあくまでもギャルとしての側面だとは思う。あたしがそうしてーって言って、にか先生もおっけ~って描いてもらったものだから。

 でも今回のは青原のあたしのイメージも付与されて、さらにあたしらしくなった気分だ。まさに今までの想像を夜明けしてきた感じだ(?)


「よかったです。皆さん喜んでくれるといいですね」

「うん! マジで青原に頼んでよかったわ!!」

「……あはは、ありがとうございます」


 遠慮がちに笑ってみせる彼女がまた愛おしく、この子とまた喋りたい、遊びたいと心から思う。

 これでちゃんと恋人にでもなれたらもっと嬉しいんだけどなー……。


「あ、あの。これで……お仕事の報酬も終わりってことで、いいんですか?」

「……そーかな?」


 あたし、あんまり意識してなかったけど、そういう事になっちゃうよね。

 てか、それってあたしと恋人ごっこしてたのが楽しかったみたいな、そういうことでいーの?


「もしかして~、あたしと恋人ごっこするのめっちゃ良かったりしたわけー?」

「い、いやっ! そ、そういうことじゃなくって……っ!!」


 まーた耳まで赤くなってる。かわいいなぁ、もう。

 あたしも鬼ではないし、そもそもあたしが好きで恋人ごっこをしてたわけだ。告白もしちゃったし、今更隠すようなことでもない。


「まっ! あたしはすっごく楽しかったし、今後も続けていきたいなー、みたいな?」

「えっ……?」

「あるじゃん! 友達以上恋人未満、みたいな関係。今はそれでよくない?」


 まさしくあたしたちにふさわしい言葉だと思う。

 友達以上恋人未満。友達以上恋人未満……。えへへ~。繰り返す度にあたしもまたニヤけてしまうなー。


「ま、まぁ。それで大丈夫です……」

「素直じゃないなー、もう」


 あー、やっぱり。あたしが好きな人が可愛すぎる。

 そんな相手が出した謎のシルエット画像。ちゃんと見たい。どんな新衣装なのか、この目で見てみたい!!

 力強くあたしは拳を握った。今ならあたしは修羅になれる気がする。


 バカな話は置いておいて、チャイムが鳴る前にあたしは自分の席へと戻るのであった。

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