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Vtuberの陰キャとギャルが百合する話  作者: 二葉ベス
第4章:年始のような計画する毎日
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第53話:赤の天才。気晴らしにデート行こうぜ!

 青原が悩んでいるのは知っている。

 にか先生にも聞いていたし、ツブヤイターでもよくつぶやいている。

 キャラデザが分からなくて悶々としているらしい。

 あたしには産みの苦しみなんてものは、やったことがないから理解できない。だから青原の辛さをあたしがどうこう言えることはなかった。


 でもさ。あたしの好きな人がさ。教室で頭抱えながらペンを走らせている姿を見ると、申し訳ないなって気持ちとか、あたしのせいでこんな風に苦しめてるんだって考えたら、ちょっと病み気味になっちゃうわけで。

 あたしにできること、なんかないのかな。


「はぁ……」

「人んちに来ておいてため息とはどういう了見だ」

「お茶持ってきたん?」

「図々しいなぁ。持ってきたよ」

「おぉ! さすが神様仏様舞様!」

「お茶とお菓子持ってきただけでずいぶんな言い方」


 貴重な休日の日。きっとあいつは今日もウンウン悩みながらキャラデザを描いているんだろうなぁ。それを手伝えることなんてできずに、あたしは暇を持て余してる。

 なのでせっかくだと思い、舞の家に遊びに来た感じだ。

 口は悪いが普通の一般家庭の女の子らしい部屋にどことなく安心する。青原の家は人というよりも何か別の生き物が住んでいるような生活感のなさだったからなぁ。


「で、なんか用?」

「まーね……」

「どーせ青原関連でしょ?」


 そのとおりである。

 というか最近のあたしが悩んでいることは大体青原関連以外ない。

 Vtuberのオキテとしての悩み事もないわけではないが、リアルの方を優先するので気分が悪いオタクはバッサリ切ったり放置したりしている。

 そういう節度がなってない相手への対応も何故かウケている原因の1つらしい。あたしはただ時間を無駄にしたくないだけなんだけどな。


「青原、いま修羅場でさ」

「浮気されたん?」

「してない! てか青原にそんな度胸ないし!!」

「ま、だろーな」


 あたしに青原の何が分かると言われたら、何もわからないです。って正直の答えるけど、普段の態度を見ていたら浮気された、ではなく。寝取られたぐらいの勢いでしかない。

 顔はいいからそれはそれで不安なのは間違いない。クラス替えが心配だよホント。


「てか、まだ付き合ってないし」

「ヘタレだなー」

「ちげーし! 青原が全然気づいてくれないんよ!! あたしはめっちゃ好き好きムーブかましてんのに!!」


 にぶちんとか鈍感とか。あぁ言うのってフィクションの中だけのおとぎ話だと思っていたが、よもやよもや。あんなにも人の好意に鈍感な女が居ただろうか。

 しかもアピールしてるのにはちゃんと反応しているから、単純に自分をそういう目線から外して考えているからだろう。

 自分に自信が持てないから、自分を好きな人が信じられない。だから鈍感になっている。という考え方は確かにありそうだ。


 ここで最初にもどってくるけど、そのために青原がいま修羅場っている。つまり自分に自信を持たせるためにキャラデザという沼に足を突っ込んで最適解を探しているのだろう。

 それに対してあたしが何もできないのが、ただ辛いだけなんだ。


「めんどくさ」

「いーじゃん別に。重たい女でけっこーですー!」

「まぁ仕事として受けてる以上、中途半端なものは出せないっていうアイツの気持ちも分からんでもないけど、そんな悩むことか?」

「わっかんない。そういうクリエイターのこだわりとか、あたしらには理解できないからね」

「せやな」


 あたしにできることがあれば遠慮なく相談してほしいとも思っている。

 でもそんな奴ではないのは知っているし、自発的に何かができれば彼女はもっと友だちがいっぱいいることだろう。


「結局、あたしは青原の何なんだろー、って考えたらマジ病む」

「つゆ、マジでメンヘラに片足突っ込み始めたな」

「え、マジ? ぶっちゃけあたしもそう思ってる」


 ネットでは散々ネタにされているけれど、実際自分自身がそういう面倒な奴になったと自覚し始めてるのはちょっとなー。

 この前の配信でだって、コラボじゃないのに無意識に音瑠香ちゃんの名前を呼んでたぐらいだし。どんだけあいつのこと好きなんだよ、あたし。


「もういっそ恋人にでもなれたら、いろんなことしてあげるのになーー!!」

「例えばコスプレとか?」

「あーもうやるやる!」

「何系行く?」

「アニコスとか?」

「もうやべぇなそこまで行くと」


 いやいや、好きな奴のためなら、あたしは何でもできる気がするよ!

 痛いのは流石に勘弁だけど、それ以外だったら青原が望むなら。って、これも重いな。


「そうでなくとも、友だちなら話ぐらいは聞くのになー」

「それはマジでそう。抱え込みがちなんよアイツ」


 でも自分から依頼した手前、催促になってしまわないか少し心配でもある。

 繊細な相手は、毛ほどのダメージでも巡り巡ってずっと考えてしまう。だからあんまりストレスを与えないように接してきてはいるけど、今はあたしが与えている側になってしまっているんだ。

 どうしたもんかなぁ。あと単純に喋りたいし。うーむ。


「呼び出して告白でもすれば、気分良くなって筆が進むんじゃね?」

「んなバカな」

「でも気晴らしは必要っしょ。缶詰しすぎても身体にも悪いわけだし」

「まぁ……」


 ずっと考えてばかりで、煮詰まって気晴らしもできないのが今の青原。

 あたしにできることがあるとすれば、確かに話し相手か気晴らしの相手になれるぐらい、か。

 ん? 待てよ。それじゃね?


「分かった。デートに誘えばいいじゃん!」


 話し相手になり、気晴らしにでもなり、さらにキャラデザのアイディアも浮かぶかもしれない!

 となったら、デートしか勝たなくない?!!


「……つゆ、天才じゃね?」

「せやろ?!」


 よし、こーなったら! デートの準備して、約束を取り付けなきゃ!

 待ってろよ、愛しの青原!!

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