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Vtuberの陰キャとギャルが百合する話  作者: 二葉ベス
第4章:年始のような計画する毎日
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第48話:青の買物。女子力のロマン

 女2人。恋人つなぎでスーパーへ。

 何も起きないはずもなく。ただただ板チョコ買いに来ただけなんだけどなぁ。


「うわ、結構うちらと同じ制服の子、いるやん!」

「まぁ、近くのスーパーですからね……」


 だからできるだけ一緒に行きたくなかったんだけどなぁ。

 周りの目線がかなりしんどい。普通の目線じゃなくて、こう。突き刺さるような。お前みたいなのがなんでギャルと一緒にいるんだ、みたいな。

 そうだよなぁ。わたしはクラスでも学校でもパッとしないような陰キャのオタクだし。こんな陽の塊であるギャルと、まさか恋人つなぎでスーパーに行くとかありえませんよね……。


「これなら外堀埋められそうじゃん」

「え? 今なんて言いました?」

「あたしと青原の既成事実作れそうじゃんって話」


 なんでそういうこと言うかなぁ。

 わたしは友だちでも十分幸せなんですけど、そんな既成事実とか言われたら、ちょっと危ない方向に偏ってしまうのでは。


「結構いるよ、同性同士で付き合ってる子」

「ま、まぁ。愛の形は人それぞれですし……」


 それをわたしに振りかざされても困るんですが?!

 愛されるという感情をあまり分かっていないけど、好き好き思われること自体は確かに嬉しい。その内容の深さがあまりにも恋愛に寄っているからわたしは困惑しているだけなんだ。

 わたしは恋愛を分からない。人を好きに思うことはあれど、それは家族愛や親愛なのであって、恋などではない。

 赤城さんの愛は明らかに常軌を逸するものだ。友愛というには少しぶれていることぐらいわたしにも分かる。恋と分類するものなのだろう。恋人ごっこって言っているんだから。

 だったらわたしは赤城さんのことが好きか、と言われたら多分だけど首をひねると思う。

 赤城さんから向けられている愛と、わたしが向けている愛が同じなのか、別の物なのか。恋愛という感情を知らないから分からないんだ。

 だから本命チョコにするか、友チョコにするかを迷っているのもあったりする。


「お、セールやってるじゃん! 青原はミルクとビター、どっちが好き?」

「んー、甘いのですね。お菓子は甘いものに限る」

「分かるー! ビターはちょっと大人ーって感じで憧れるけど、それはそれとして苦いんだよなー。ほい、甘い方」


 緑色の買い物かごに板チョコが数枚入り込む。

 あれ、これで買い物終わりでは? チョコ溶かして、混ぜて型取って冷蔵庫なら、むしろ手間がかからない分、これをこのまま渡した方がよいのでは?

 気づいたら手が動いてた。赤城さんに手渡す形で。


「これ、バレンタインのチョコでよくないですか?」

「……ロマンが、ない」

「え?」

「ロマンがないじゃん! こう、なんというか! 女子力のロマンが!!!」


 えぇ……。女子力にロマンが必要なことを初めて知ったかも。

 男の子が刺激するロマンは知ってるけど、女の子のロマンって何? 白馬の王子様的な? それとも眠りの森の美女みたいなお姫様願望とか? うーむ、分からん。


「前から思ってたけど、青原って女子力欠片もないよね」

「捨ててるとは思いますよ。今までイラスト一本でしたし」

「はいじゃあ、恋人ごっこの一環として手作りチョコも作ることー」

「え、めんどい……」

「文句言わない!」


 手渡したミルクチョコがそのままカートの中に放り込まれてしまった。

 あーあ。楽できると思ったのに。

 でもイラストなんかを参考で探す時も、みんな手作りでお菓子を作っているイメージがある。あれって面倒くさくはないのだろうか。出来合いの物を食べればいいと思うんだけど、これは人生経験が欠落した人間が考えることなのかも。


「あとはトッピングねー。こっちだったっけな」

「あ、そこのお野菜取ってください。今日作り置き作るので」

「ういー。大根なら他に何がいる?」

「んー、クック○ゥ次第ですかねぇ」


 1人暮らしの味方。クック○ゥで今晩の作り置きを選ぶ。面倒くさがりだけど、調味料をいちいち買い足さなくてもいいから楽なんだよなぁ。あぁ、クック○ゥ様に感謝しかないや。


「青原の生活ってこんな感じなの?」

「一人暮らしですし、贅沢も出来ませんからね。バイトしたくないですし」

「青原がコンビニでアルバイトするとか、ぜんっぜん想像できんわ」

「そんなこと言ったら赤城さんはどんなバイトしてるんですか?」


 そういえば聞いたことがなかった。やっぱりアパレル系なのだろうか。

 この服とかどうですか~って、半ば強引に買わされる奴。あぁいうタイプのお店、ブティックっていうの? 行きたくないから結局ユニ○ロやら、G○になっちゃうんだよなぁ。


「…………ないしょ」

「え、なんでですか?! 誰にも言いませんよ?!」

「だから内緒」

「えぇー!」


 うわ、俄然気になってきた。

 実はメイドカフェでアルバイトしてて、オタクたちにもえもえきゅんとかしたり。

 ……あながち似合わなくもないから困る。だけど、ちょっとだけもやっとする。わたしじゃない誰かにそうやって媚びてるんだって思ったら。いやいや、Vtuber活動だって大体そんなもんだ。わたしがあまりにも率先してしないだけで、赤城さんはオキテさんとして元気に媚び媚びしてるんだから、今さら気にすることではないはずだ。うんうん。そうに違いない。


「はい、この話題終わりだから! トッピングあるよ! ここ!」

「あ、はい……」


 もう踏み込めなさそうな雰囲気に何となく後ずさる。むぅ、そんなに聞かれたくないのか。ちょっと残念だ。


 トッピングかぁ。いつも英数字が書いてあるチョコしか食べないから、こうやって改めて付属品についての考えも足されると流石に、うーん。チョコの全体像が一気に分からなくなってしまう。


「これはチョコスプレーかぁ。あとは中に入れるアーモンド? こっちはチョコで文字書ける奴じゃーん! ヤバ、テンション上がる!」


 チョコにアーモンド。あれかな。赤いパッケージの奴。チョコで文字を書くって、それこそメイドカフェのケチャップみたいなもの? チョコスプレーは、チョコに色鮮やかな粒をまぶす。チョコ on チョコ。じゃあチョコの中にチョコ入れてもいいのでは? いやよくないよね? どっちだろう。


「あれもいいし、こっちも~! って、青原何してるん?」

「チョコ on チョコがありなら、チョコ in チョコもまたありなのかなー、と」

「あ、ありじゃね?」

「そうですか……」


 でも湯煎段階で溶けてしまうのであれば、チョコ in チョコって実際難しかったりするのではないだろうか。ならやっぱりチョコ on チョコで……。


「だーもう! この際はっきり言うけど、あたしに送りたいチョコって何?!」

「えっ、と……。うーん……。何チョコになるんでしょうか?」

「はぁ……そっからかぁ……」


 チョコを作る作らないにしろ、出てくる単語はこういうものだ。

 多分目標が曖昧だから、どういうチョコを作るか想像つかないんだと思う。


「ぶっちゃけ、あたしのことどう思ってんのさ!」

「えっ? ……まぁ、友だち、ですけど」

「でも今は恋人じゃん」

「ま、まぁ……」

「じゃあごっこ遊びなりに、本命チョコってことで作って! これも仕事!」

「は、はい……」


 納得はいってないけど、理解はできた。

 まぁ百合営業的にもそういう体で作った方が面白いか。

 となるとやっぱりハート、かな。……ハートかぁ。


「青原の本命チョコ、楽しみにしてっから!」

「は、はい。努力します……」


 まぁ、とにかく頑張ってみよう。手始めに文字でも書いておけばいいか、ということでチョコペンを買い物かごに入れることにした。

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