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Vtuberの陰キャとギャルが百合する話  作者: 二葉ベス
第4章:年始のような計画する毎日
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第46話:青の友情。ほっぺたをプニプニするのは合法?

 バレンタイン。バレンタインって、あれだよね。チョコとかそういうやつだよね。

 人生始まってから大体17年。わたしが恋した相手もいなく、愛されたこともないわたしにとって誰かにチョコをあげるという文化は存在しない。

 あるのはただ、スーパーで半額になったチョコを1個買うぐらいの日だ。

 でも確かにそこにバレンタインデーが存在するわけで。クラスの中もだいぶ浮ついていた。


「今年は誰に渡すの?」

「言わなーい!」

「えー、ケチー!」


 女の子同士で誰にチョコを渡すのか牽制しあったり。


「なぁ。14日って、なにか用事あるか?

「……ないけどぉ?」

「だ、だよなー! あはは!」


 男の子同士で誰がチョコをもらうのか、お互いに監視しあっていたり。

 わたしは特にあげる予定も貰う予定もないのだが、今年はそうも言ってられないかもしれない。


「よっす、青原!」

「あ、おはようございます。赤城さん」


 友だちでバレンタインデーと言えば、友チョコだろう。

 友だちにならチョコを渡す理由にはなるし、Vtuberの百合営業としてのネタにもなる。うんうん、わたし賢い。やっぱりこういうちょっとした本当が混ざってこそ営業にも味が出るというものだ。

 まぁ。今まさに恋人ごっこ中なので、義理か本命か、で言えば。本命ってことになってしまうんですけども。


「青原はどうするん?」

「へっ?! な、何がですか?!」

「チョコ、誰かに渡すんかなー、って」


 それ、本人の前で言わせる必要あります?!

 あと勘ぐり方がなんとなく下手、というか、もうちょっと脇道にそれてから本命の話題を持ってくるべきなんじゃないんですか?!

 面倒くさいから、別に直球の話題でもいいんだけども。


「赤城さんと星守さんにはあげようかと」

「あ、あたしはともかく、舞にもあげるんだ」

「いつも話してくれますし。クラスで会話できる人、あまりにも貴重なので……」

「あ、うん……」


 むしろ赤城さんと星守さん以外に誰がいるって言われたら、先生とか?

 髪を切った最初の頃は男の子とかにも声をかけられたんだけど、数週間経てば誰も話しかけてくれなくなってしまった。

 単純に飽きられてしまったのか、わたしの反応が芳しくなかったのか。それとも後ろで赤城さんが睨みを効かせていて怖かったから、なのか。本当のことは定かではないが、間違いなく言えるのは、そんな中でも話しかけてきてくれる星守さんもまた、優しいということだ。

 陰キャなのに、ギャルしか友だちがいないって、自分で自分が恐ろしいな……。


「青原もグループ作ればいいじゃん。顔はいいし、意外と反応面白いから行けるって!」

「意外と、ってなんですか。大体そんな勇気があれば一人ぼっちにはなってません」

「あー。青原、ツブヤイターでも基本話しかけないしねー」

「ぐはっ!!」


 そーだよ! オキテさんとしての赤城さんとしか基本話さないよ!!

 あとはレモンさんとか、か。レモンさんはほぼほぼだる絡みだけど、あれだけでも助かるといいますか。


「リスナーともダメなん?」

「それを配信で聞いてみたことあったんですよ」


 そう。これでも最初の頃に比べたら爆伸びしたチャンネル登録者も300人前後。オキテさんとのカップリングイメージはなくとも、そこそこ配信に遊びに来てくれる方はいらっしゃる。

 同じVtuberだけではなく、本物のリスナーさんなども中にはちらほら。

 嬉しい限りなんだけど、リスナーにも話しかけられない、という問いにあるリスナーが答えてくれた。


「そしたら、オキテさん抜きだとわたしには話しかけづらいって」

「草」


 え、そんな怖い空気出してる気はないんだけど、と言われるもその場は爆笑に包まれる。

 それどころか、何故か同意の意見まで。ど、どうしてだ……。

 改めてツブヤイターの履歴を見てみたら、確かにそうだと感じた。わたしの呟き、結構無感情というか……。


「絵文字やびっくりマークがないから怖いって……」

「あはははははははは!!!!」


 ほら、爆笑された。

 女の子としては確かに致命的なんだけど、絵文字ってどうやって使うかわからない。

 ぴえんの目が潤んだ顔文字しか知らないし、他に何があるかって言われたら、手を合わせている絵文字と天使の輪っかが付いた顔文字を合わせて昇天しているようなコンボ技もあって。

 まぁなんというか、キャラデザの件もそうだけど、こういうデザイン関連は本当によく分からないなぁ、って。


「てか……。てか絵文字ないから怖いって、そんな小学生みたいな理由でっ! あはは!!」

「笑い事じゃないですって。……その、仮にも恋人なら、助けてくださいよ」


 わたしは友だちと思ってるけど、相手は恋人ごっこのつもりだし。その辺はちゃんと弱みを握っておかないと。

 とか脳内で考えながら赤城さんの顔を見ると、彼女の顔がみるみる赤くなっていく。え、なんで?!


「ごめん青原。今のもっかい言って?」

「い、嫌です!! なんか嫌になりました!!」

「えー、青原のケチー」


 お返しと言わんばかりに、不満だったわたしのほっぺたをつねってはびよ~んと伸ばす。やめてほしいんですけど。

 見えない範囲からの接触はちょっと嫌だけど、ほっぺたならいいかと思って放置している現状は実はあんまり良くないんじゃないだろうか。

 いや、でも。赤城さんがわたしのほっぺた触ってる時、かなり幸せそうっていうか、簡単に拒否れないような雰囲気しているのが行けないと思うんですよ、うん。


 やがて、堪能したのか幸せ成分を補充したと見受けられる赤城さんがほっぺたを手放す。

 まったく。ちょっとヒリヒリするからやっぱりやめて欲しさある。


「よぉ、つゆ。青原。相変わらずいちゃついてんな」

「なっ!? い、いちゃつ……っ?!」

「おっす、舞。おはよー!」


 あ、あれ? 軽く流された。

 もしかしてギャル界隈では普通のことだったりするのか?

 こう、ほっぺたをプニプニするのは……?!


「星守さん、もしかして……。ギャルの世界ではほっぺたはノーカンなんですか?!」

「は?」

「あっ! いや、その。接触技的に……」

「あれよ、友だちとしてアリナシ的な?」

「そうですそれです!」


 星守さんが「あー」と納得したように赤城さんとわたしの顔を見比べる。

 え、なんでそんなに難しそうな顔してるの? わたしはただ、友だちとしての接触技として有効打なのか、それとも無効札なのかが聞きたかったんですけど。

 有効打なら、わたしも赤城さんのほっぺたをプニれるし。あー、でも化粧とかしてるって言ってたし、それだったらお化粧剥がれるから嫌かなぁ。


 などと考えている最中に、星守さんは答えを出した。


「ナシじゃね?」

「えっ……」

「舞、おまっ!!」

「や、フツーほっぺたプニる友だちとかありえんっしょ。なぁ、つーゆー?」

「お、お前ぇぇぇぇぇええええ!!」


 赤城さんがまた顔を真っ赤にして、星守さんに向かって怒ってる。

 それをどこ吹く風と言わんばかりに口笛を鳴らす彼女は強いのか、ただ赤城さんが弱いだけなのか。

 何にせよ、ほっぺたをプニプニする友だち関係はないのかぁ。

 ……じゃあ、赤城さんがいつもするその行動の元はもっと別の物なのでは?


 考えないようにしよう。そんなの、わたしなんかじゃありえないんだし。

 このやり取りはホームルームのチャイムが鳴るまで続いていた。

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