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Vtuberの陰キャとギャルが百合する話  作者: 二葉ベス
第2章:仲良くなるように営業する毎日
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第23話:赤の愛情。この気持ちをなんと例えよう

「でもやめようと思ってもやめられない理由に露草さんがいて、わたしの活動を支えてくれるんです。そんな相手だからどんなことにも答えられるようになりたい。だから百合営業だったんです」


 Vtuberは脆い存在だ。1つの炎上があれば、1人のVtuberが消えていく。

 脆くて、儚くて。炎上しなくても光らなければ、それはただ広大なネットの海に沈んでいく宝物なわけで。

 音瑠香ちゃんは、青原はそんな中でも必死にもがいて地上を目指した。その最中にあたしっていう光を見つけて、そこに向かって泳いでいた。あたしは彼女を助けたくて、海に潜ったのにどうやら同じく迷子になってしまったらしい。

 でも音瑠香ちゃんっていう光が今度はあたしを照らしてくれて、手を取ってくれて。一緒に上まで上がろうって言ってくれたんだ。そんなの。そんなの嬉しすぎるに決まってる!

 嬉しすぎて涙が止まらない。


「ぶぁーーー!!! ムリーーーー!! 泣くの止まんないーーーー!!」

『これからコラボなんですよ?! まだ泣いてるんですか?!』

「いいよ、ずびっ……。始めちゃっても……」

『えぇ……ま、まぁ。時間なので分かりましたけど』


 百合営業がどうとか、恋愛ごっこをするとか、そういうのあたしにはまだ分かんない。

 でも分かんないなりに、音瑠香ちゃんが求めているのは恩返しであって、感謝を伝えたいってことは分かった。だからって百合営業をおすすめしてくるのは正直どうかとは思うけど。

 憧れはないわけではない。恋人とか、親友とかに。

 あたしにはたくさん友だちがいるし、舞っていうなんでもだる絡みできる親友だっている。

 けど、青原にはそういうのじゃなくて、もっと別の、トクベツな関係になりたいって思ってしまった。推しとVtuberじゃ物足りなくて、VtuberとVtuberでやっと。じゃあそれ以上は。

 まだ怖い。あたしの、この心の中でくすぶっている煙は燃え尽きた後なのか、それとも……。


:お、始まった

:オキテちゃんから

:オキテちゃんから

:オキテちゃんからこんばんはー


『えーっと、初めましてこんねる。バーチャルいつも眠たい系Vtuberの秋達 音瑠香です』


:何だこのかわいいアバターは?!

:いつも眠たい系ってなに

:こんねるー

:声、落ち着く


『えっと、これからコラボっていうことで、オキテさんの方も自己紹介を――』

「うぁーーーーーーん!!! 音瑠香ちゃん好きぃーーーーーーー!!!!」


:!?

:キモオタおるて

:オキテちゃん?!

:!?

:キモオタおるが???

:一般オタク混ざってる?


「ずびっ……あー、音瑠香ちゃんとコラボできてるぅ~~~!!! 最高……死んでもいい……」

『死なないでくださいよ!!』


:草

:草

:草

:ウケる

:何があったwww


『え、えっとですね? 配信の前に色々ありまして。気付いたら泣いてました』

「だってぇ! 音瑠香ちゃんがすごくいいこと言ってくれたからぁーーーー!!」


 完全に感情が爆発してる状態だ、あたし。

 嬉しすぎてどうにかなってしまったんだ。音瑠香ちゃんは、本当はあたしのことをどうでもいいかもしれない、なんて心のどこかで思ってた。青原と会ってからは特にそう。普段から塩っぽい対応だし、青原本体関してはいっつも怯えて声まで震えてて、全然正体見抜けなかったし。

 でもさ。ちゃんとあたしのことを考えてくれて、ちゃんと言葉にして口にしてくれる。それって実際問題嬉しすぎて、涙が出てちゃうんだ。


「やば、まだ止まらない……」

『あの、せっかくのコラボなんですけど』

「いいじゃん、同接いっぱい伸びてるし……ずびっ」

『え? うわっ、同接20人超え?! どこから湧いてきたの?! 怖い!!』


:怖いって言われたwww

:オキテちゃんから。フォローしました

:オキテちゃん人気だからなー

:絵師さんどなた?


『あ、モデルですか? 全部わたしが……』

「そーーーなんだよ! 音瑠香ちゃんはお絵かきすっごく上手くってぇ!! プロ並みなんだよぉ!!」

『い、いや、そんなことは……』


:イラスト見せて!

:マジ? クリエーターぢからつよ

:かわよい。フォローした

:今日は音瑠香ちゃんを褒め倒す回と聞いた

緑茶レモン:遊びに来たら、悲惨で草


『褒め倒さないし、悲惨でもないから! うぅ、コラボまだ数分しか経ってないのに、めっちゃフォロー増えてるし。嬉しいけどさぁ……!』


 そうだ、音瑠香ちゃんはいっぱい。いっぱい頑張ったんだ。頑張った子はちゃんと報われなきゃいけない。あたしもこんなにフォローが増えてて、音瑠香ちゃんが認知されて嬉しい。だってあたしの推しなんだもん。推しには幸せで、笑顔であってほしい。もっと。もっと!


「顔うつむいてるから、今照れてるんだよきっと! かわいいねぇ!」

『う、うるさいですよ! そんなことないですから!』


:フォローした

:かわいいいいいいいいいい!!!!

:てぇてぇのタワー立つ?

緑茶レモン:オキテ×音瑠香。ふむ……


『勝手にカップリングにしないでよ! もう……』

「じゃあこれを気に、コンビ結成しちゃいます?」

『へっ?! 本気で言ってるんですか?!』


 いやいや、百合営業を言い始めたあんたが言うのかよ。

 でもこれはこれで、かなりイジり甲斐が出てきたっていうか。音瑠香ちゃんもノリがいいから、ちょっとワクワクしてきたかも。


「えー? でもさっきまで百合営業でもしようか、みたいなこと言ってたじゃん」

『そ、それは反則じゃないですか?!』


:百合営業?!!

:数分でものすごいてぇてぇを接種してる

:お前ら、結婚するか?

:営業じゃなくてもええんやぞ

:もっと百合しろ


「ほら、みんなも言ってるしー」

『さっきまでビービー泣いてたあなたが言いますか?!』

「今は泣いてないですしー、ふふふー」

『……このギャル』


 ふふふ、なんとでも言うがいいさ! 今のあたしは無敵モード! ネルカチャンカワイイヤッター成分を接種した完全無敵朝田世オキテなのだ。むしろ夜でもオキテほしい。

 さて、そろそろ本題のゲームに移りたいし、最後の一言でもって、ここを落とすとしよう。

 喉のチューニングをマイクに聞こえない程度にやりながら、目の前にいなくても目線は上目遣い。両手だって顔の前で組んで、そして一言!


「あたしじゃ、ダメなん?」

『ぐっ!!!』


:アッ!

:心停止GG

:アッ! 死

:天使の顔

:†昇天†

:これはブリってますねーーーー。俺も死んだわ


「はい、つーことでこれからゲームするぞー!」

『ちょ、ちょ! 何いまの!!』

「にっしっし、秘密ー!」

『このギャルはぁ……!』


 なんだか、自分の心を打ち明けてくれてあたしの心もスッとして。青原の前に張られていた心の壁みたいなものが、少しだけ薄くなった気がした。

 これからはもっと仲のいい友だちとして。いや、V友として! 2人で営業しようね、青原!

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