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007 そうだ、動画を作ろう。

 魔王城への侵入者を誘き寄せるため、高級アイテムを置く。

そのための金を、生配信動画の投げ銭で稼ぐというのが、黒スライムのクロスケの提案。

なんということでしょう、愛玩魔物のくせに、妙にいいアイディアを投げやがる。



「でもさー、いきなり配信して視聴者集まるもんなの?」


「まー、無理だろうな。というか、配信するにも一定のチェンネル登録者数がいるしな。

 だからまずは、普通の動画投稿からかな」


「うわー、めんどくせ」


「んで、こっちの世界の人間の間で流行ってる動画は……」


「やる前提で話進めないでもろて」


「魔王様の意向もあるからな。

 俺としても、魔王様に拾ってもらって良くしてもらってんだ。

 だから、できる限り協力するつもりなんだよ」


「愛玩魔物のくせに、忠誠心が妙に高い」


「お前が側近のくせにやる気なさすぎんだよ」


「もう、働くことに疲れたんや……」


「はいはい。とりあえず、異世界との接続をいったん切ってと……」



 やる気なくぐだっと椅子にもたれる私に代わり、動きは遅いものの手早くクロスケは作業を進める。

とりあえず今のところは、世間の流行というのを調べるようだし、適当に話を合わせておこうかな。

最終的に「なんか無理そう」という結論に持っていくとしても、そういう姿勢だけは、ね。


 そうして色々検索するこちらの世界の動画は、はっきり言ってめちゃくちゃつまらなかった。



「料理動画に裁縫、生け花。そしてボードゲーム……」


「内容は異世界動画にもあったけど、こう……。ね?」


「うん。なんと言えばいいのかわかんないけど、面白くないな」


「うん。説明がこう、硬っ苦しいというか……」


「めちゃくちゃ眠くなるな」


「ホントそれ」



 クロスケの大きなあくびにつられ、同じく口いっぱいに空気を頬張った。

まあ、肺もないんであくびに意味はないんですけど。ついでに眠くなるけど、眠る必要もなかったりしますけど。



「まあ、でもこれでわかったな。チャンスだ」


「チャンス?」


「そ。俺たちは、異世界動画知識がある。

 つまり、面白い動画を作る方法を知っているわけだ!」


「作り方は知らないと思うんですがそれは」


「まま、ともかくだ。同じことやっても、面白い動画にできるってコトだよ!」


「せやろか……」


「てことで、同じ題材で動画作るぞ!」


「マジでやんのかー」


「ふふふ……。一回動画作成っての、やってみたいと思ってたんだよねー」


「あ、もしかして魔王様うんぬん言ってたけど、本音はそっちだな!?」


「勘のいいワイトは嫌いだよ」


「まー、うん。確かに動画制作は興味あるかも」


「よし、決定! さっそく題材決めからな!」


「ういっす」



 言われてみれば確かにそうで、魔王様のわがままに付き合わされていると思えば気が重いが、ただの動画制作ならば興味がある。

まあ、到底うまくいくとは思っていないけれど、それでもクロスケと一緒に遊ぶにはもってこいのネタだ。



「んで、ワイトはなにかできることねえの?」


「え? 私ですか? ずっと研究ばかりで、動画にして面白そうな趣味なんて……」


「そういや、篭りきりで魔術とかの研究してんだよな。

 ならさ、それの発表してみるとか?」


「秘術を人間が見る動画で発表しろと!?」


「あー、そういう系なのか……。

 さすがに魔術を人間に教えたとなると、魔王様も黙ってないよなぁ……」


「私は普通に動画で発表するような、安い魔術じゃないと言ってるんですが」


「それは割とどうでもいい」


「ひどいっ!」



 私の魔術を邪険に扱いながら、黒いスライムは紙とペンを器用に持ち……。

器用に持ってる? 持っていると言うのだろうか……。

見た目的には、スライムにペンが突き刺さってるようにしか見えないのだが、ともかく器用に使い、何か書き出している。



「んじゃ、さっき見てたボードゲームとか色々あるだろ?

 あの中で、できそうなことないか?」


「あ、私がやる前提なんだ?」


「そりゃ、俺スライムだし。できると思う?」


「思わないっす」


「てことで、どれならできそうなんだよ」


「んー……。料理は無理かな」


「なんでさ」


「ほら、食べれないから味見もできないし。

 作る必要もないから、作り方も知らないし」


「そりゃそうだな。んじゃ、料理動画はボツと」


「あと針仕事も無理」


「なんでよ」


「骨の手なので針持てないっす」

「は? なんもできねえじゃねえか! なんだったらできんだよ!?」


「ははは! いやー、魔術の研究しかしてなかったんで、できることがなんもないのを、いまさら思い知りましたわ!」


「笑いごとじゃねえ!」



 プンプンと表面張力で踏ん張る水面のような肌を震わせ、クロスケは怒っているが……。

うん、かわいいだけだな。さすが愛玩魔物。

だが、言われっぱなしも癪に触る。



「まあでも、これでも魔王様の側近ですから?」


「うん?」


「副案のひとつやふたつ、すぐに出てくるわけです」


「うん」


「…………」


「出てこねえのかよ!」


「も、もうちょっと待って……。

 今、胃のあたりからせり上がってきてるから」


「それただの吐き気だ!」


「今、喉のあたりを……」


「出るな出るな!」


「あ、引っ込んでった」


「逆流性食道炎になるぞ!」


「まあ、ワイトに胃も食道もないんすけどね」


「知ってた! てか、適当に誤魔化してるだけだな!?」


「いやいやいやいや……。副案のみっつやよっつ……」


「自らハードルを上げんな! 無茶すんな!」


「ハードルは上げるほどくぐりやすいですし!」


「やっぱはぐらかしてるだけじゃねえか!」


「ダイジョウブダイジョウブ! えーっと、ほら! あれだ!」


「どれや!?」




「自分でできないのなら、できる人に投げればいいじゃない!」




◆ちょこっと人物紹介◆


【クロスケ】

黒いスライム。魔物であるスライムの変種。

時空を操る能力を持つ、最強クラスのモンスター。

ラスボスの魔王倒すと膝に乗ってたペットが裏ボスだったっていうアレ。

そんな強力な能力を異世界動画観るために使ってるヤベー奴。

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