表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/65

062 (省略)再び

 スライム倒して早100年……。ってのは当然嘘ですけど。

あのへっぴり腰だった勇者モドキも、3年も経とうとしている今では、堂々とした剣捌き……。でもない。



「ごらー! なんやそのヘタレた動きはっ!! しゃきっとせんかいっ!!」


「はっ、はいっ!」


「返事は良くなりましたよねー」



 さすがに怒鳴られるのに慣れたのか、サキュバスの喝にも動じなくはなっていた。

それでもいまだに、スライム倒すのもやっとなんですけどね……。



「ホンマ、返事だけって感じやけどな」


「それでも何本か動画出しましたし、一応魔王城への道のりは着々と歩んでますよ。

 秘儀(省略)を使ったので、バッサリカットされてますけど」


「前から思ってたんやけど、その秘儀ってなんなん!?」


「色々あるんですよ、いろいろ」


「まあええわ。生放送も放送事故なく進められてるし、投げ銭も集まってるもんな。

 それに、店戻った時客がゆうてたんやけど、最近勇者目指す子増えてんねんて」


「思惑通りですね。ところで、それだと店の方が忙しいのでは?」


「ウチが代わりに置いてる子に任せてあるから大丈夫やで?

 さすがに様子見に行ったら、従業員が3倍に増えてたのはビビったけどな。

 あと店も増やすゆうてたし、勇者が増えたおかげで客も増えてるようやわ」


「へー、それはすごい。というか、それなら投げ銭なくても、店の収益で十分では……」


「それさー、店の売り上げを魔王城のアイテムに当てたら、それこそ横領やで?」


「あっ……。さすがに、あなたと同レベルに落ちるのは願い下げですね」


「喧嘩売っとるん?」


「買取価格によります」


「一発グーパンや」


「おいやめろ、俺が被害食らうんだが!?」


「あ、クロスケ生きてたんですか」


「ずっと黙っとるから、死んだかと思ってたわ」


「死んでねえよ!?」



 なんだかんだ魔族3人と人間1人で、うまくやってこれたものだとしみじみしてしまう。

といっても、魔王城に時々帰った時以外は、私とクロスケはまさに一心同体なので、サキュバスと同じく、誰もが私たちを一人とカウントしてそうですけどね。

特にクロスケは、あまり会話に入ってくる事もありませんし。


 さて、しみじみするのもたいがいにしましょう。

ほのぼのとしたスライムとの激戦ごっこを終わらせて、ニコラ含めて次回の生放送の会議をしますか。



「さて、次回の生放送ですが……。ついに来てしまいましたね。魔王城最後の砦、ミノタウロスの迷宮に……」


「冷たい石造りの迷路やったり、いばらの迷路なら迫力も出るんやけどなぁ……」


「実際はただの花壇の迷路ですからね」


「えっ、そうなんですか? とても楽そうで助かります」


「これは死亡フラグだな」


「自分なぁ、何回教会送りにされれば気が済むんや?」


「今までもかなりのサポートがあったのに、数百回は逝ってますからねぇ」


「やっぱり、難しいんですか……」



 少し希望が見えたようなニコラだったが、私たちの反応に希望の光はしゅんと消えたようだ。

これまでも私たちの指示によって、うまく戦闘を回避し、最短ルートで攻略してきた。まさに異世界動画でいうところのRTA(リアルタイムアタック)のように。


 けれど今回の相手は、あのミーさんだ。一直線に最短距離を取ろうと花壇に入り込んだ瞬間、ミンチ肉の完成は目に見えている。

多分、今まで攻略してきたどの難所よりも難しいだろう。あの異常な探知能力をごまかす方法は、私も見当が付かないのですから。



「やっぱり、ミーさんとの戦闘は回避しないとですよね」


「でもそれだとどうやって突破すんだよ? 迷路を正攻法って手もあるが……」


「そんなん、他の魔物に食われるに決まっとるやん」


「ひっ……」


「あー、ゴブリンに美味しく戴かれたトラウマがあるようなので、言葉を選んでもらって……」


「…………」


「おい、むしろお前が詳しく言ったせいで、白目剥いて泡吹いてるぞ?」


「おっとこれは失礼しました」


「静かになったしちょうどええわ。コイツおってもおらんでもおんなじやしな。

 ともかく、あの迷宮を戦闘無しで突破する方法やな……。無茶やない?」


「ん-……。奥の手として、ミーさんに裏で手を回すとか……」


「もしくはあの牛頭のことだから、サキュバスの色仕掛けが効きそうだな。奇乳派だし」


「なんやなんや? アイツ、ウチのことそんな目で見てたんか!?

 もー、しゃーないな! お姉さんが一晩相手したるしかないわな!」


「むしろ怖がる気がするので、それはやめていただきましょう」


「ちょっ!? 期待させといてなんやねんそれ!」


「期待してたんですか……」


「なんかすまん、話を脱線させちまったな」


「いつものことです。コラテラルコラテラル」


「いうほど巻き添え(コラテラル)か?」


「ミーさんが巻き添え食らってるので」


「確かに」


「まーた、二人にしかわからん話しよってに。自分らラブラブか!?」


「オッサン臭いチャチャ入れないでくださいよ……」


「ま、ともかくだ。ミノタウロスの様子を調べて、突破ルートを考えるしかないな」


「そうですねぇ……。同僚の弱点を調べるのは、少々気が引けますが」


「今さらなにゆうとんねん! ウチら、すでに魔王軍裏切ったようなもんやで?」


「怖いこと言わないでくださいよ……」


「へーきへーき、魔王様にさえバレなきゃええんやから!」


「ま、そうだな。バレたら確実に死ぬけどな!」



 そんなお気楽な二人ですが、なんかこいういうのって……、まさにフラグってやつだと思うんですけどねぇ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ