表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/65

045 煽り耐性ZERO



「まあ、そういうわけでやな、客は新しく取らんでもええって話やねん」


「そうなのかー」


「聞いといて興味なさげやな!?」


「長いだけで中身なかったなーって」


「自分ホンマっ! ホンマなあっ!!」



 ぐりぐりと肋骨を抉るように拳で攻撃してくるが、本気じゃないのもあってノーダメージだ。

しかし問題は、これをどう言いくるめて協力させるかなんだよなぁ……。

ま、でも動画の責任者はクロスケだし、クロスケに投げましょうか。



「と、言ってますが、どうします?」


「ん? 嫌ってんなら別にいいんじゃないか?」


「え? いいんですか?」


「本人が乗り気じゃないしな。まあ、その気持ちもわかる」


「はい?」


「そりゃ一緒の画面に映れば、人気がこっちに集中しちまうだろ?

 そんなの、サキュバスとしてのプライドが許さねえし仕方ねえって」


「あ? なんやて?」


「なにせゲストとして出るわけじゃん? それも女神様と崇められてるのがチャンネル主だぞ?

 そんなのの添え物になっちまえば、どれだけ惨めかは計り知れねえぞ?」


「ウチが添え物やと?」



 こわっ……。クロスケ本気で煽るじゃん。

このスライム、サキュバスにイロイロとすすり取られたいんですかね?

その可能性は、冗談じゃなく本当にあるかもしれないな。



「しかも今はまだ3千人程度のチャンネルだが、日々登録者は増えてる。

 あの見ためで人気に火がつき始めたってことは、やっぱこの世界は貧乳派が多数派なんだよ。

 そんな中、デカさだけが取り柄の天然ぶりっ子風のあざといのが出たって、邪魔になっても人気にはならねえだろ」


「やってやろうじゃねえかこの野郎!!」


「うわ、簡単に乗せられてる……」


「お、やんの? 貧巨決定戦やんの?」


「やってやるっつってんですやろがいっ!」


「もはや意味わかんない言葉遣いになってますよ!?」


「よし、決まりだな。チャンネルの主役を賭けた動画撮るぞ!」


「芸歴の差ってもんをみせたろやないかい!」


「あー、はい。お二人がそう言うのであれば……」



 あれ? これってもしこちらが負けても、チャンネルはサキュバス主役で存続するから、仕事が減るだけなのでは?

まさかクロスケ、そこまで考えて……。恐ろしい子!!

なーんてのは、私の思い過ごしだったらしい。



「ワイト、ぜってー勝つぞ!」


「はい?」


「貧乳が至高であることを証明するんだよ!!」


「…………。あ、はい。そうですか」



 このスライム、私が巨乳派だってこと忘れてるみたいですね。

まぁ、大きいほうが好みですが、彼女は性格が論外なので構わないのですが……。

ともかく、クロスケは負ける気がないと分かっただけでヨシとしておきましょうか。



 ◆ ◇ ◆ 



「で、アンタたちで勝負することになったのね……」



 店に帰れば、ロアンさんは顔にパックをしながら、お酒のグラスを揺らしながら気怠そうに言う。

ちなみに、扉を開けてパックしてる姿を見て叫んだのは、言うまでもない。

ぱっと見お化けだからね。スケルトンの亜種である私がそれにビビらされたのは謎ですが。



「なんとなく、なりゆきで……」


「ま、いいんじゃない? あの子、誰かと張り合ってないと持たないタイプだから」


「意外と冷静ですね」


「そこそこ長い付き合いだもの。あの子が独立して店開いたのだって、アタシと張り合いたかったからでしょうしね」


「分かってて相手してあげるとは、大人の対応ですね」


「別に、そんなんじゃないわ。アタシはただ、この店を潰したくないだけよ」


「へぇ……。先代から受け継いだ、大切なお店ですもんね」


「…………」



 ロアンさんはカラリとグラスの氷を回し、気だるそうに窓の外の月を眺めた。

何も語らないけれど、なにかある。そんな雰囲気を感じる。

まあ、私も大人ですし? 根掘り葉掘り聞くような野暮なことはしませんけどね。

気にはなるけど。気にはなるけど!!



「それよりも、勝負ってどうすんのよ? まさか、どっちの動画が再生数多いかとか?」


「その手もあったんですけどね。でも、相手がイチからチャンネル起こすとなると、フェアじゃないですよね」


「そうね。アタシもそれ思ってたのよ。さっき確認してたんだけど、アンタえらく登録者伸びてるじゃない」


「へへへ、おかげさまで」


「まだ今まで撮り貯めたヤツを順次アップロードしてるみたいだけど、はやくウチの動画も出してほしいわね。宣伝として十分効果見込めるもの」


「それは順次ということで……」


「そうね、気長に待つわ。それで結局、どういう勝負するのよ?」


「それはですね、編み物対決ですっ!!」


「うん、話が見えないわね……」



 少々疲れが出ているのか、ロアンさんのツッコミは、キレのないふわっとしたものだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ