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44/65

043 (省略)



「やめやめ! 自分らの変態アピールはええねん!

 さっさとなんでんなトコまで来たんか言わんかい!」


「まあまあ、眉間のしわが増えますよ?」


「誰のせいやと思っとんねんっ!」



 サキュバスは捲くし立てるが、本当にさきほどまでの媚び媚びオーラはどこへやら。

まあ、昔っからそうなんですけどね。操れる相手以外には、こうやって圧をかけてくるタイプなのだ。

ある意味で尊敬しますよ。そんな二面性をバレずに使い分けられているんですから。



「いい感じにヒートアップされてますし、手短にお話しますね」


「最初からそうせえや!」


「簡単に言うとですね(省略)なんですよ」


「えっ、ちょっと待ち、今なんか時間が飛べへんかったか!?」


「なんのことでしょうねー?」


「なんのことだろうなー?」


「とぼけんなや!」


「ま、まあええわ。んで、人間にウケる動画作りたいっちゅう話なんやな?」


「そういうことです。それには人間に媚びるのがうまい方を頼るのが良いかと思いまして」


「なんやその言われかた、イラつくんやけど」


「短気は損気ですよ?」


「その態度が余計ムカつくわ。だいたいな、そんなんウチになんの得もあらへんやなか」


「それはどうでしょう? 動画に出るんですよ? そりゃもう店の宣伝にはうってつけでしょう?

 あのしっかり者のロアンさんも、動画は客寄せになるって乗り気なくらいでしたからね」


「はぁ……。自分ら、なんもわかってへんな」


「分かってない? 動画は店の宣伝にならないと?」


「ちゃうわ。ウチがなんで店なんて開いてるかっちゅう話や」


「あー、そういえばそうですよね。人間と違って、私たちには魔力があればお金は必要ないですし」


「せやろ? ワイトもなんやかんや言いながら、考えが浅いんよ」


「うっわ、煽れると思ったらめっちゃ煽ってくるやんコイツ」



 自分で言うのもなんだが、基本的に彼女とは昔から、私の方が頭も論も回っていたのもあり、こうやって何かを頼むこともなければ、言い負かされることもなかった。

まるでそんな今までのツケを払わせるかのように、鼻高々という様子だ。まあ、実際に鼻は高くてすっと通った、整った顔立ちをされていますけどね。

そんな彼女の鼻をへし折ったのは、今日はずっと聞き役に徹していたクロスケだった。



「コイツも、お前と同じなんじゃないか?」


「へ? 私と同じですか?」


「そう。だってコイツは、男を襲って魔力奪ってるわけだろ?

 なら人間の男が無警戒に近寄ってくるように、店を出す方が効率的かなって」


「それのどこが私と同じなんです?」


「餌を置いて人間を釣ってるところとか、よく似てるだろ?」


「心外です!」「やめろや!」



 ついうっかり、サキュバスと声が重なってしまった。すっごい不愉快。

なんというか、彼女と同じような扱いをされるのは、生理的に無理というやつですよ。

私は知性に極振りした、インテリなんですから。痴性に全振りした、ヘンタイと一緒にしないでいただきたい。



「まあ、同じかどうかは置いておくとして、店の経営はついでなわけだろ?

 だから宣伝する必要はないって言いたいんじゃないかってな」


「スライムなんぞに解説されたのはムカつくけど、そういうこっちゃ。

 アフター行くんも、一日一人でないとあかんからな。人が増えてもしゃーないねん」


「え? でもそれだと、新規顧客が必要なんじゃないですか?

 たしかあなた、相手の男を吸いつくしてしまうんじゃなかったですっけ?」


「吸いつくす!? そこんとこ詳しく!!」


「なんでクロスケは興奮してんですか。いや、いいや。薄い本のネタにしたいだけでしょうし。

 まあ、サキュバスなんで、男の精というか、魔力を奪って生きてるわけですよ。

 そんなの全部吸い尽くせば、相手のミイラ化は避けられないでしょう?」


「おぉ! 至上の悦びと引き替えにするのは、命ってわけか!」


「いやいや……。これ聞いて、なんで興奮できるんです?」


「鑑賞する分には最高の題材だろ!?」


「その価値観はよくわかりませんけどね……」



 クロスケは私が動画を見始める前から、異世界のインターネットというものでヲタク文化というものを見続けたせいか、どうもなにか色々と狂っている気がしていましたが……。

サキュバスというものへの憧れにも似たなにかは、そうとう拗れているようですね。


 しかし問題はそこではなく、いや問題は問題ですが、今の論点はそこではないのでして、その辺の話を聞いておきましょうか。

サキュバスに本気を出されて、人間を根絶やしにされるとこちらの計画にも影響が出そうですし。



「なので新規顧客入荷用に、宣伝するに越したことはないでしょう?」


「ふんっ! ウチを昔と同じやと思っとんやったら大間違いや!」


「ということは、今では別の方法をとっていると?」


「まあ、話したってもええけど、長いで?」


「あ、それなら(省略)って技があるんですけど」


「ちょっと待ち! やっぱそれ、なんかおかしない!?」


「なにがおかしいんでしょうねー?」


「なにがだろうなー?」


「とぼけんなや! って天丼かいっ!」



天丼とは同じネタを繰り返すことらしいですよ。知らんけど。

「知らんのかいっ!」

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