014 初投稿……ども……
突然の来訪、突然の撮影。
にも関わらず、ミーさんは文句も言わずに付き合ってくれるんだから、いい人だなぁ……。人じゃなくて魔族だけど。
静かな部屋。一人きりの魔術研究。
思い返せば、先日のドタバタが嘘のようだ。
あのあとクロスケは、映像を撮るだけ撮ったら編集すると言って、そのまま解散となった。
どうせ手伝わされると思ってたんだけど、編集作業は自分でやるらしい。
スライムがどうやって映像編集をしているかは、私の研究する魔術と同じく極秘なのだろう。そういうことにしておこう。
ともかく、撮影自体はそこそこ楽しいものだったし、あとのことはクロスケに任せよう。
それで投げ銭があるならヨシ、ないならないで、魔王様のわがままはごまかしごまかしでやっていこう。
つまり平常運転ってことだ!
『着信アリ』
なんて考えが伝わってたんですかねぇ……。
連絡用水晶に、着信表示がされていることに気付いてしまった。
どうせ魔王様だ。放置したい……。放置死体。
「でも、直接研究室に来られても困るしなぁ……」
誰に言うでもない独り言と、小さくため息をついて、連絡用水晶に手をかざした。
『出んの遅えよ!』
「あ、その声はクロスケ? 連絡寄越すなんて初めてじゃない?」
『まあな。てか、んなのはどーでもいいんだよ!
それよか作った動画! プチバズった!』
「へー。再生数100行った?」
『目標が! 低い!!』
「最初の動画ってそんなもんじゃないの?」
『まあいいや。とりあえず俺んトコ来いよ』
「あー、はいはい。動画見たいし、寄せてもらいますよ」
『お、やっぱお前もどんな風な仕上がりか気になってたのか!』
「それは別に気になってないっす。新着動画チェックしたいだけっす」
『おい! もうちょっと興味持てよ!』
「あー、はいはい。善処します」
なんだかテンションの高いクロスケとの通信を切り、一応外に出るのだからと魔王様との謁見用のローブを羽織る。
今までは研究室では白衣、その他私用は何も着てないことが多かったのだが……。
なんともあの、クロスケによる女体化後は、何か着ていないと恥ずかしくなってしまうのだ。
「これはあれか! クロスケによる恥辱プレイ!」
うん、ツッコミ不在のボケは虚しくなるだけだからやめよう。
ツッコミを求め、行くしかあるめえな。あのスライムの部屋へ!
と、歩みを進めていて思う。そうだ、ミーさんも連れていこうと。
協力者なんだし、どの程度反応があったのか知りたがってるかもしれないしね。
そんなこんなで、庭へと寄り道してから、クロスケの部屋へとやってきたのだ。
「なんてぇかここは、ジメジメしてるべなぁ……」
「スライムにとっては快適な環境らしいですよ」
「へへ……。ここならキノコ栽培ができそうだべ」
総務部愛玩科のプレートがかかる扉の前で、自身の暮らす場所とは大違いの様子に、きょろきょろと周囲を見回すミーさん。
小さなクロスケには無駄に広いと思っていたけれど、ミーさんが居ると少し狭く感じる廊下だなぁ……。
「ともかく、ここがクロスケの部屋ですよ」
「中を見るのも楽しみだべ」
「ミーさんにとっては、少々窮屈かもしれませんが……。
部屋のもの壊さないように注意してくださいね」
「んだなぁ。気をつけねっどな」
そう言いながら、手に持つ花束を整え直す。
部屋に行くのだからと、手土産を用意するそのマメさ……。できた人だ。人じゃないけど。
「失礼しますよー」
「はいよー。入ってくれー」
コンコンとノックして問い掛ければ、いつもの調子の声が返ってくる。
いつも通り露ふくノブを開けて入れば、すでにクロスケは動画を凝視していた。
「うわ、ひきこもり感半端ねえ!」
「おじゃましますだぁ」
「第一声おかしい!」
「あ、すんませんだぁ」
「そっちじゃない! そこの骨の方だ!
てか、ミノタウロスさんも来てくれたんだ。狭いけど適当に座ってくれ」
「はいはいー。テキトーに座りますよー」
「お前はいつも通りだなぁ……」
適当にと言われたので、いつも通りソファーに座る私に対し、床にちょこんと正座するミーさん。
まあ、家具がどれも小さいので仕方ないんだけどね。
「あ、ミノタウロスさんにお茶入れたいからさ、手伝ってくれる?」
「お、オイのことはお気遣いなく。なんなら、オイが手伝うべ」
「いやいや、前行った時おもてなしされたしな? ゆっくり座っててくれ」
「仕方ないですねぇ……。あとそれと、花瓶ってありましたっけ?
ミーさんがお花持ってきてくれたんですよ」
「それも向こうにあるからさ……」
「…………?」
なんだか少し、いつもと様子の違うクロスケ。
なんだかしきりに、奥の炊事場へと誘導されているような……。
ま、まさか! ミーさんと仲良くやってることへの嫉妬!?
「なに変な顔してんだ」
「おや、頭蓋骨に出てましたかね?」
「そんな気がしただけだ。ともかく行くぞ」
「はいはい」
奥に行けば、こそこそと話し始める。
これはあれか! 給仕室でいない人の悪口を言うOL的な!
「お前さ、バカみてえなこと考えてえるだろ?」
「ボケなくてもツッコミ入れてくれるって、ありがたいですねぇ」
「何の話だよ!?」




