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四日目である。
五個の黄金のランダムボックスを買う順は決まっている。俺、ペギー、アーロン、エロ爺、ホーリーだ。
何人かが途中乗船してきたが、どうもそいつらは俺が出品した異世界宝石が目当てのようで、オークションの展示室はちょっとした騒ぎが起きているらしい。
Lが言うには有名な魔導技師が何人かいるらしい。ホーリーが声をかけた金持ちもいるそうなので、どんな高値が付くのか楽しみである。
そして、この特大異世界宝石がいい感じに目くらましになってくれて、黄金のランダムボックスに高値を出そうという者はかなり限られるだろうとのことだ。
ゼロにはできない。
さてさてどうなることやら……なんだがそこら辺はなるようになるしかない。
すでに船旅に飽きている俺は、朝食をたっぷりと食べるとアキバドルアーガに移動することにした。
朝食を食べ終わってからそのことを告げるとエロ爺が妙に哀しそうな顔をした。
「もっとプールとかでゆっくりしていいんじゃよ」
「南の島で銃に飽きたら泳ぐ」
とだけ言い残して移動する。
「あ、ボクも行きたい」
「あいよ」
Lが手を挙げたので反射で了承する。
「ここから日本に転移か……」
と、アーロンがなにやら乾いた笑いを浮かべていそうな感じで呟いているが知らん。
「あっ! 一緒に連れて行ってもらったら、これ渡せたんじゃないか⁉」
剛が叫んでたがそれも知らん。
ていうか、一応身の安全を確認するまで護衛は続ける予定らしいから、あってもなくても一緒だぞ?
なんていう説得をされたのだろう。
「持ってるのと持ってないじゃ、気持ちが違うんだよう!」
という泣き声が自室に入る前に聞こえてきた。
が、やはり知らん。
広いところに行く予定がないしな。
秋葉原のど真ん中でムスペルヘイムを出すわけにもいかんだろ?
「そういえば、装備とか持ってるのか?」
大丈夫だとは思うが念のためにな。
「ちゃんとアイテムボックスに入れてるよ」
「そりゃよかった」
「職業柄ね。怪しい組織に誘拐されそうになるリスクがあるからねぇ。そこら辺は手抜きできないよ」
「プロ意識だな。けっこうけっこう」
そんなことを言っている間に着替えを終える。俺と霧は昨日と同じ。
LはSFに出てきそうな装甲付きぴったりスーツと二丁拳銃だった。
「いいなそれ」
「いいでしょう。もうファンタジーの世界に全力で反抗したくてこういう装備を作ったんだけどね。これが不評でさぁ」
「TPOは守れってことじゃね?」
「最先端っていうのは、受け入れる人が少ないから最先端なのよ」
霧の呆れた声に総括され、俺はアキバドルアーガに転移した。
昨日の続きで二十三階からだ。
「うわっ、本当にダンジョンに来た。ははは!」
なんかLが笑ってる。
ポータルストーンを回収し、昨日と同じように【魔骨戦車】を召喚するとLがさっきとは違う興奮を見せた。
「骨だけじゃないよね!? なんかコーティングしてるし細工もしてあるでしょ!? うわっ、これってミスリル? じゃない! なにか混ぜてる!?」
「ミスリル使った合金だよ。魔力の伝導率がいいんだ」
「ミスリルの合金!?」
「はいはい。後で後で。後は性能をご覧あれ」
そんなわけで【魔骨戦車】に乗り込み、昨日と同じように攻略開始……と行きたいのだがその前にやることがあった。
「右手法は時間を食いすぎる」
というわけで偵察部隊も出すことにした。
呼び出したのはアイズバット。
蝙蝠の羽を生やした眼球だ。それを百ほど召喚して先行させる。
天井すれすれを飛んでいるから大丈夫かと思ったが何匹かはウィザードワイトの攻撃魔法や罠にやられている。
視界共有と飛行能力しか与えてないからな。そんなもんだ。
数に任せてのごり押し偵察用だから耐久性はない。
錬金魔法がメインの魔法生物はキャリオンスライムをベース素材としているものがほとんどだ。
このアイズバットも同じなので少しぐらいなくなってもすぐに補充できる。
キャリオンスライムがなにで出来ているかを考えたらね。簡単だね。そしてそれを利用した攻撃方法もあるが今回は採用していない。
霧のレベルアップが目的だから俺だけが倒していたら意味がない。
え? 目的はもう達成しているだろって?
そんなこたぁいいんだよ。
【瞑想】による魔力=経験値貯めでどこまでレベル上げができるかを試したいんだから。
次への階段はすぐに見つかった。アイズバットたちを戻しつつ【魔骨戦車】でモンスターを薙ぎ払い、たまに霧やLが攻撃をしたりしつつ上を目指す。
二時間ほどそれを繰り返した結果、俺たちは四十階に辿り着いていた。
「もうこれわけわかんない」
Lの笑いが止まらない。
「魔導戦車の開発依頼が来てたけど、もうこれでいいんじゃないかな」
「売る気はないぞ」
「だよねぇ。まぁボクもいまはお嬢様の傘下に入ったし、そんな仕事よりも面白いことさせてもらえそうだからいいんだけど」
そんなことを話している内にアイズバットが階段を見つけたのでそちらへと向かう。
ここへ来るまでの戦いで霧のレベルは115になった。さすがに上がり方が少し遅くなっている。
そしてLだが、ここに来た時には魔導技師のレベル90だったのが、93になった。
たったそれだけだ。
【瞑想】効果すげぇな。
「霧ちゃんのレベルの上がり方も異常すぎ、お嬢様はまだ何か隠してるよね」
Lには言ってなかったのだが、彼女も【鑑定】が使えるので隠してはおけない。
とはいえ【瞑想】のことを簡単に教えるべきか否か。
「さて、どうしたもんかなぁ?」
「ボクにも教えてよう。なんでもするからなぁ」
「いま、なんでもって言ったか?」
「そうだよ。性的でもオーケーだよ~」
「あっ、いま霧の眼鏡が光った」
「ひ、光ってないわよ!」
カチ。
そんなやり取りをしていると【魔骨戦車】がなにかの罠を踏んだ。
基本、罠は踏み抜く方針だったから仕方がない。何度か落とし穴にも落ちたがその度にキャリオンスライムを呼んだり、【念動】を使ったりで対処した。
さて、今回は……?
天井からスピーカーみたいなものが飛び出し、そして予想通りに音を発した。
「うわっ、うるさ!」
甲高い警報機みたいな音が鳴り響く。
「アラームだ。モンスターが押し寄せるよ!」
「なに?」
Lの言葉を聞き返す暇もなく、あちこちの曲がり角から大量のモンスターが姿を見せた。
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