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見えていない。気付いていないとでも思っていたのだろうか?
「あ~あ」
残念だ。とても残念だ。
【金剛要塞】
「せっかく楽しんでいたのに、どうして約束を破るかな?」
絶対の障壁が俺を守る。前衛たちの攻撃も、後衛の魔法も、キムの降り注ぐ乱槍も全て防ぎ、豪雨を受け止める傘程度の音しか発生させない。
「####!!」
連中が何か叫んでいる。味方の死に驚いたり、俺に攻撃が通用しなくなったのに驚いたり、そんなところだろう。
キムは黙っているが顔が引きつっている。自分の命令が裏目に出たことに気付いたのだろうし、いまさらながら過ちに気付いたのだろう。
そもそも、俺を殺そうというのが間違いなのだ。
しかし、それなら奴らにどんな選択肢があったのかといえば、俺たちと出会う前に逃げるか、出会ってから逃げるか……とにかく逃げるだけだ。
戦端が開いた今では、もはや逃がさないがね。
戦闘行為というものは恨みつらみの発生源だ。ここで逃がして無用な禍根を未来に残すぐらいなら跡形もなく全てを消し去っておくほうがいいに決まっている。まさしく後腐れがない。
もちろん、外の連中も。
ダンジョンに入る前に宴会中だった連中の食べ物や飲み物にキャリオンパラサイトの卵をばら撒いておいた。今頃は解体されて跡形もなくなっていることだろう。
「さて、興が削がれた。きれいさっぱりなくなってしまえ」
【軍団起動】
死霊の軍団を呼び起こす。
繋ぎ合わせの骨と錆び鎧の皮。胸に込められた魂代わりの鬼火が炎を零す。ただそれだけ故にいくら壊れてもすぐに組み直し立ち上がる【無尽歩兵】
大量の髑髏の山、それら全てが魔法を使う【叫び唱える首塚】
無数の牙で構成された大包丁を握りしめた巨人【越屍武者】
魔力増幅の装具で身を固めた凶魂の魔法使い【幽鬼兵】
屍蝋を燃料とするカンテラを握りしめ、鬼火の獣を従える【幽灯導師】
骨の鎧に身を包み鬼火の獣に騎乗して戦う【獣鬼兵】
腐肉の腹と無限の食欲を持つ【大食い紳士】と【大食い婦人】
俺の軍団のほんの一部がこの場に出現し、連中を取り囲む。
「誰に剣を向けたか、それを魂に刻んで死ね」
指示はただ指さすだけだ。
それだけで軍団が動きだす。
「#####!!」
配下たちは逃げ場もなく抵抗もむなしく縮まる包囲の輪に圧殺されていく。
キムは……そのまま空を駆けて逃げようとしたようだが無駄なことだ。【叫び唱える首塚】が一斉に【魔力霧散】を唱えればあの青い馬は消えるしかなく、落下途中で【越屍武者】の大包丁に薙ぎ払われた。
残った残骸は【大食い紳士】と【大食い婦人】が争って腹の口に収めてしまい、跡形もなくなってしまうのにそれほど時間はかからなかった。
「途中までは良い訓練だったんだがなぁ」
それだけに惜しいが、別にこれ以後もこんな好機がないわけではないだろう。
「大丈夫だったか?」
「ええ……すごいわね」
「うん? いや、あいつらはそんなに」
「織羽のことよ」
「ああ……まぁ、それぐらいの苦労はしたからな」
「あなたの苦労は……想像ができないわ」
「しなくてもいいさ。知っていいことなんて特にないだろ。それより、このダンジョンを攻略して帰ろう。腹が減って来た」
途中でファミレスかコンビニを見つけないとな。
その後は呼び出した死霊の軍団で蹂躙した。
残りのボス青将軍も相手ではない。散らばった青水晶を集めている間に、ダンジョンの外殻を構成する空にひび割れが走った。
「崩壊が始まったみたいだな」
「少し急ぎましょう」
霧の呟きは恐怖心から発したものではなかったので二人で走って草原に戻り、出入り口の光球に飛び込む。
出た場所はやはり家畜小屋だった。
「あれ? ここにいた人たちは?」
「さあな」
ここにいた連中が宴会の跡を残してきれいさっぱりいなくなってしまっていることに霧が首を傾げる。
真相であるキャリオンパラサイトは土の下に待機していて、そのまま俺のアイテムボックスに収まった。
「あっ」
俺たちが出た後で出入り口の光球が一度大きく膨らみ、それから一気に圧縮する。
光が絶えた後に残ったのは拳大の石だった。
石といっても宝石だ。ダイアモンドのように透明度が高い。
「気配は青水晶と同じみたいだが……」
『■■■■』
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黒塗りだ。青水晶のときと同じだな。
そこまで秘密にしたいことでもあるのかね。
「……なぁ、これ俺がもらってもいいか?」
「いいけど、売らないの?」
「それはいずれ?」
青水晶と一緒に調べてみるとしよう。
スマホで千鳳に連絡し迎えを頼む。
帰る途中でコンビニを見つけた。弁当類はほぼ全滅だったので山ほど菓子パンを買って帰った。
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