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死の勇者TS陰子は異世界帰還者である  作者: ぎあまん


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 どうやら霧の能力では俺の新しい部屋までは見ることができなかったようだ。

『金が余っているエロ爺さんが愛人をもてなすためだけに作った部屋を愛孫のために改造した部屋』を前にして息が止まっていそうな顔で動かなくなった霧が面白い。


「なにこれ」

「部屋だ」

「部屋? うわ……こういうのはテレビの中にしかないのかと思ってた」

「いや、あっちの世界で見たことないか?」

「それは……そうなんだけど」


 俺は世界に一人の勇者だったし、霧は国家の運命を見る占い師だ。居住関係では優遇されていたはずだ。昨日見た装備の具合も同じ程度だったし文明レベルに大きな違いはないと踏んだのだが。


「あっちとはほら、色々と違うから」

「まぁな。ベッドとかもぱっと見は立派なんだが寝心地はこっちの庶民ベッドの方が上だったりするしな」

「ええ、本当に」


 霧はそろそろとソファに腰を掛けた。


「別に汚れたりとか気にしないぞ?」

「そうかもだけど」

「アイテムボックスに着替えとかあるか?」

「え?」

「泊まるだろ? もう遅いし」


 なくてもコンビニに行けば下着ぐらいはあるだろ。

 パジャマは……異世界で暮らしていた頃から下着で寝るようになったからな。

 ああ、そういえばバスローブがあったな。


「え? ええ……いいの?」

「部屋なら余ってるし……どうせなら住むか?」

「それは……どうしてそういうこと言うの?」

「なんか家嫌いそうだから。気のせいなら別にいい」

「気のせいよ」

「そうかい」


 それでもまずは風呂だ。

 順番に入ってダンジョンでの汗を流す。


「なんで下着だけなの?」


 遠慮するので先に体を洗ってきた俺に霧が動揺している。


「暑いし、家だといつもこれだよ」


 ショーツとゆるいタンクトップだけの俺を直視できないようだ。見える? 織羽の虚乳なんてみたって面白くもないだろうに。

 寒くても訓練を兼ねて仙法で体温調節するつもりだし。それにいまは春だ。


「パジャマになりそうなのはバスローブくらいしかないぜ」

「うう……」

「別に同性なんだから恥ずかしがる必要ないだろ?」

「そ、そうね」


 なんだか足取りの定まらない様子で風呂場へと向かっていく。


「ああそうだ」


 と、風呂場の説明をしつつ錬金魔法の師匠ファナーンが送り付けてきた美容品も試させてみることにする。


「すごいいいから使ってみな。あっちの俺の魔法の師匠の一人がくれたものだ。すげぇ美人が使ってた美容品だ」


 使ってたかどうかは知らないが美人なのは事実だ。

 美人が使う美容品、しかも異世界製と聞いた霧は目の色を変えて風呂に入っていった。


「さて……」


 霧が風呂に入っている間に彼女に教える予定の【瞑想】について再確認する。

 軽く行った【瞑想】は集中を研ぎ澄ませ、それを行っている間の魔力回復速度を激増させる。

 深く行う【瞑想】は二種類に分かれる。

 白魔法的立ち位置における【瞑想】は内面世界への旅であり、己の魂から神へと接触する方法を探る行為である。

 仙法的立ち位置における【瞑想】も内面世界の旅であることに変わりはないが、神に会うのではなく己が神となるための最適解を探す旅となる。

 彼らとは根本的に価値観の違う俺からしたら、やり方が違うだけで究極的には同じところに辿り着くことになるのではないかと思う。本来的な意味で神に会うには己が神となるしかない。日本的に死ねば仏と考える俺が女神に会えたのはあの時の俺は魂だけの存在だったからだろう。神と仏の優劣など知らないが、会話ができる距離感にはあるのだろうし。

 霧に施すのはあくまでも軽い【瞑想】だが、その先でどちらに向かうことになるかはわからない。

【鑑定】で見る限りは白魔法よりな道筋を辿るのが正しいような気もするが、こちらの世界の神が俺たちの声に応えてくれるかどうかはわからないし。

 先に試してみておくべきだったか?

 まぁ、今夜は魔力をその身で強く感じさせることができれば成功……ぐらいだろうな。


「お、お待たせ」

「お疲れ~。水はそこのウォーターサーバーのを飲んで」

「う、うん」

「あの薬はどうだった?」

「まだよくわからないけど、付けた感触がべとべとしてなくてさらっとしてていい」

「ふうん」

「あっ、でも体がすごく楽。疲れが抜けたみたい」


 と俺は振り返って霧を確認し、薬の効能を確認した。

 髪も肌も顔色も全てがよかった。

 ダンジョン後の疲労が全て抜けているようだ。

 元々文系美少女な霧が普通じゃない美少女にランクアップしそうになっている。

 俺と同じようにタンクトップとショーツだけなので彼女との体形の違いがはっきりと表れる。巨乳と虚乳。一字の違いの結果はあまりにも残酷だ。


「合ってそうだな。あれ、これからも使っていいから」

「え? でもあっちの世界の物なのでしょう? 貴重なのでは?」

「大丈夫、いくらでも手に入る」


 この間、辰を使って手に入れたでかい青水晶を見せて共同研究を持ち掛けたときに大量に送り付けてこられたので余裕があるし、もう分析が終わっているから自分で作ることも可能だ。素材もそこまでレアじゃないからこっちの世界の物質を錬金魔法で弄れば再現可能だ。

 美容品は報酬のつもりだろうし、大量に送り付けてきたのはしばらく連絡するなということ……つまりはファナーンがテンション爆上がりで調べたくなるほどの素材だったということだ。

 あのとき、他の師匠たちもいたが誰も青水晶のことは知らなかった。

 はたして青水晶はただのエコなエネルギー物質でしかないのか?


「さて、そろそろやってみるか」


 一息ついたところで俺はソファ前にある絨毯に彼女を誘った。


「楽な姿勢で座って」

「こういうときって座禅じゃないの?」

「なんでもいいよ。気持ちが落ち着けられて長時間姿勢を維持できる姿勢なら」


 座禅がいいのは鍛えているとそれが一番バランスがよくなるからだ。


「それに、この体だとまだ硬くて座禅ができない」

「この体?」


 おっと……。


「どういう意味?」

「俺にはまだ秘密があるってことさ」

「…………」


 だから、なんで一々顔を赤くするかな?

 まっ、言ってもいいかもしれないけど。このタイミングかどうかはわからないな。

 ていうか、そんなことをしてたら【瞑想】が後回しになるし……。


「大丈夫か? 集中できるか?」

「だ、大丈夫よ!」


 クールな優等生像がどんどん崩れていってる気がするな。

 そこはかわいくもあるが……。

 対面であぐらの形で座り、彼女の手を取る。

 昔、白魔法のニースと仙法のイクンの両師匠に手ほどきしてもらった時のことを思い出しながら【瞑想】について説明する。


「いまから霧の内面へ旅立つ。とはいっても今回は扉を叩く程度の簡単な旅だ」

「うん」

「まずは素の魔力を感じるようになってくれ。スキルによってシステム的に使うのではなくこの世界に存在する力をもっと自由に扱うために」

「うん」

「あと、もう返事はしなくていい。ただただ、瞼の裏を見ていてくれ。俺の言葉はベッドサイドのBGM程度に聞き流してくれればいいから」


 顎を引くように頷いた霧に俺は言葉を紡ぐ。

 向こうの世界の言葉を。


『影を踏む旅を始めよう。夕闇に心を震わせよう。見えるものと見えないものの狭間で踊り、恐怖と喜びの溝を跳ぼう。恐ろしいものに会いに行こう。哀しいものを殺しに行こう。喜びと再会しよう。怒りを燃やし尽くすために…………』


 言葉に深い意味はない。ただの刷り込み。それを起こすためのキーワードだ。同調した俺と霧の精神は、俺が落ちていくのに合わせて彼女を引っ張っていく。

 そして彼女の内面へと。

 眠った知覚を叩き起こし、隠された世界の側面を知る『目』を開かせる。

 彼女の心の旅が始まる。





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