表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死の勇者TS陰子は異世界帰還者である  作者: ぎあまん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

183/183

183 Aの世界線の終局/あるいは運命神の覚醒は全時間軸・全世界線を同期する


††霧††


 ノイギーアは堕ちた。

 地面に突き刺さって半分に折れ、炎を上げている。

 ノイギーアを貫いた光は容赦なく戦艦内部に破壊の影響を振りまき、乗員のほとんどを焼き尽くした。

 この時点で生きていたのは、私と織羽だけ。


 いえ……あの織羽も生きているとは言えないのかもしれない。


 異世界から戻って来た織羽は明らかに様子がおかしかった。

 イングとの決戦を急ぎ、未完成のノイギーアを引っ張り出してヨーロッパへと殴り込む。

 誰もそれを止めることはできなかった。

 あの子の悪乗りに『王国』の連中が慣れてしまっていたのが問題なのだと思う。

 どんなに心配をしても織羽なら完遂してしまうと、手放しの信頼をしてしまった。


 だけど、そううまくはいかない。

 いかなかった。


 あの子が転げてしまった時にどうにかできる人が『王国』にはいなかった。

 私もまた、それは同じ。


「がっ!」


 そんな声が、地上にいた私にも聞こえた。

 イングの握る剣が織羽の胸を刺し貫く。

 そしてその瞬間、イングと織羽の姿は溶けあうように光に呑まれ、そこから消えた。


「ぬううううううううう!」

「あはははははは! ついに完成した!」


 二人の戦いのさらに上でもまた、一つの決着が付こうとしている。


 光神イブラエル。

 魔神王エンザライン。


 光に呑まれた美影と、星をも締め上げそうな醜悪な巨蛇による戦い。


 神を超えるために神殺しを利用している神と、それに反対する神。

 二つの意見は策謀と力技の駆使の末に、最後まで光神の優位のまま推移し、織羽の死を持って完結する。


 イブラエルは神殺しの力を手にし、エンザラインを殺す。

 殺す。

 何度でも殺す。


 一度の死で終わることのない神の不幸がここで繰り返され、巨大なるエンザラインはその身を八つ裂きにされることを繰り返されていく。

 そして殺されるごとに、その力をイブラエルに吸収されていく。


 その度に、地球は破壊されていく。

 その上に住む人々は、生物は……いや、それらの区別なく全てが破壊されていく。


 星の終わりがすぐそこに迫っている。


 私はそれを、ただ見ているだけしかできなかった。

 この目の能力は織羽の不幸を取り除くためにあるのではないのか。

 あの子の進む道を眩く楽しいものにすることこそ、私の役目ではなかったのか。


 あの子が苦難を楽しむばかりに、私はそれを怠ってしまった。


 あの子に守られることの安らかさに溺れ、私は見ない振りをしてしまった。


 あの子が強くなることを望んでいたから。


 ……いえ。


 先を見続けることを、私が恐れてしまっていたから。


 未来のなにもかもを知ってしまったら、私はなにも楽しむことができないのではないか?


 そう、恐れてしまったから。


 天に断末魔の絶叫が響き渡った。

 ノイギーアよりも小さくなってしまった魔神王の全身に光の剣が突き立っている。

 それが最期だったようだ。

 何千、何万回の死の末に魔神王エンザラインは完全な消滅を迎えてしまった。


「さあ、次はお前だ!」


 より眩い存在となったイブラエルの殺気が私に注がれる。


「神にさえ不可能な未来視の能力。それこそが次なる次元の壁を突破する鍵!」


 そう。

 それこそがイブラエルが数多の異世界召喚を行った理由。

 レベルとクラスとスキルによって強制的に人間の可能性を顕在化した目的。


 神には不可能な能力を持つ者を探すため。


 神殺しは偶然にも見つけることができた。

 だが、同じような奇跡を起こすことは神でさえも二度としたくないと思えるほどの精神的疲弊に見舞われた。

 故に、自動的なシステムによるあぶり出しを行った。


 それが、異世界召喚とその後の戦い。

 そこで目当ての能力が誕生するまで、異世界召喚を繰り返したのだ。


 そして、占い師というクラスを持つ私が誕生した。


「さあ、その力を……よこせぇぇぇぇ!」


 興奮のままイブラエルが叫び、無数の光の剣を私に向けて放つ。

 先読みしても不可能なほどの数を放つ。

 例え全てを避けることができたとしても、ただの人間が生きていけないように、地球を壊す勢いで放つ。


 ただ、私という存在を完全に消し去らないように、全力でそれを行うこともできない。



 だけど私は、全力で戦える。


 光の剣は、私に届く前に消滅する。


「……な? うあ!」


 空で放たれた驚きの声は、次の瞬間には風を切る落下音に変わり、そして私の前にイブラエルの艶姿が落ちて来る。


「なっ……なにが?」


 力を失ったイブラエルが自分で作った穴の底で呻いている。


「全ての世界線でのあなたの敗北をこの世界線のあなたと繋げました」


 美しい顔が理解できない顔で私を見ている。


「ここ以外では、あなたは全ての世界線で負けていますから」

「そ、そんな! そんなことはありえな……」

「私が、そうしたから」


 強く言い放つとイブラエルは言葉を失う。


「……まさか、そんな。世界線はすべて独立して不可侵のはずでは」

「それはあなたたちの常識で、私の物ではないわ」


 再びイブラエルが言葉を失う。


「……これが、神を超えた神の力だというのか?」

「あなたの神に対する了見が狭いだけではないですか?」


 イブラエルの動揺などどうでもいい。

 数多の世界線で織羽に敗北した光の神は神殺しの権能によって力を失い、神としての形を保つことさえも難しくなっている。


「わ、私は、どうなる?」

「あなたの最後の権能は私の物になる」


 その光が織羽を私の所へと運ぶ道しるべになるから。

 でも、普通にやって来れてしまうのは面白くないわよね。


 どうせなら苦労してもらいましょう。

 私にこんなに心配させたのだから。


 イブラエルの断末魔の叫びを消し去り、私はその時を待つ。

 限界を迎えた星は崩壊を始め、溢れ出したマグマに私は吞まれる。


 これにてこの世界は終わり。

 だけど大丈夫。


 あなたは私を見つけるわ。

 なぜなら、私はもうあなたを見つけているのだから。





よろしければ、励みになりますので評価・ブックマークでの応援をお願いします。

下の☆☆☆☆☆での評価が継続の力となります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ