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死の勇者TS陰子は異世界帰還者である  作者: ぎあまん


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169/183

169 意外に早く登場? いや、そうでもない?


 食事が運ばれてきたがさすがに口を付ける気にはなれない。

 なにしろ周りには性欲を持て余した連中ばっかりだからね。

 うん、初めてだよ。

 ここまで貞操の危機を感じたのは。

 そういうわけで食事はアイテムボックスに放り込んで食べたことにして、ダンジョン攻略用の携行食をもぐもぐしておく。

 ああ、こんなことなら弁当屋とか巡っていろいろ買いだめておけばよかった。

 でも、これはこれでうまいな。


「さてと……この後はどうするかな?」


 ちょっと予想外の展開で思考停止だったが、この時間を利用して今後の行動指針を改めて考えておくこととしよう。


「それで……」


 異世界に来ようとした目的は?

 ダンジョンの謎を暴き、あわよくば師匠連中を出し抜く方法を見つけるため。


 見つかりそう?

 わかんね。どうも【鑑定】だけじゃなくて白魔法全般が不可にされてしまっているらしい。

 一番の調査方法を封じられてしまったわけだ。


「行き詰まっておる」


 困った。

 まだまだ修行が足りないわねとか言われそう。


「しかしまさか、モンスターたちをこんな風に養殖してるとは思わなかったな」


 もっと魔法的に生成してると思ってたな。

 その残骸として青水晶があるんだと考えていたんだが……。


「それならあれはどういうメカニズムなんだろうな?」


 モンスターを倒したら出てくる青水晶。

 あれの意味はどういうものだ?


 うむむと考えていたらドア向こうに気配が近づき、そして問答無用でドアが開いた。


「ノックぐらいしろよ」

「お前はこの世界に来るときにノックをしたのか?」


 冷たくそう言い捨てられ、俺は「おやっ」とその男を見た。


「ゴブリンじゃないな」

「当たり前だ」


 細身に長髪。

 青銀色の髪が特徴的な優男。

 冷たい視線にゾクゾクは……しないなぁ。

 それは霧の方が上だ。

 見たことがない男だ。

 だけど……。


「知り合いだっけ?」

「違う」

「でも、あんたは俺のことを知ってるよな?」

「…………」


 むっとした顔で沈黙。

 この声、どこかで聞いたことがあるんだよな。

 どこだったかな?


「来い」


 男はちらりと書机の上の空になった食器を見ると、顎で俺を招く。


「どこに?」

「この世界を見物させてやる」


 そう言い捨てると部屋を出ていく。

 罠かと思ったがここにいてもどうなるわけでもなし、男に従うことにした。


「俺は封月織羽。お前は?」

「……ラインだ」

「よろしく、ライン」

「…………」

「愛想がないね」


 心地よい自己紹介は無視で締めくくられ、俺はその背中に従って歩く。

 不思議と、男の後についていくと誰とも出くわさなかった。

 まっ、ゴブリンじゃないしな。

 ラインは廊下をまっすぐに進むと壁へと辿り着く。

 そのまま歩き続けて手をふっと振ると、そこに穴が生まれた。

 転移門的なのを作ったっぽいな。

 歩みを止めることなく穴を潜るラインに続く。

 次に現れたのは薄青い世界だった。

 水族館にいるような気分。

 実際、周りは水槽だらけだ。

 ただ、泳いでいるのは世界の魚類ではなく、水棲系モンスターばかりのようだ。

 眼前にあるのが水族館で言うなら目玉の巨大水槽か?

 ただしここにいるのはジンベイザメではなく、俺も飼っているアレだった。


「水竜王か」

「そうだ。お前が確保しているもののオリジナルだ」

「へぇ?」

「様々なモンスターの見本をここで作り、あるいはデータを収集してそれを再現し、そして各所のダンジョンに供給する。この世界はそのためのものだ」

「ハイゴブリンとやらが管理人?」

「そうだ。連中はいくらでも増やせるし、個体による誤差も少ない。手足として使うには優良な存在だ」

「人間よりも?」

「人間が従順な羊だった事例があるなら、是非とも見せて欲しいな」


 私怨バリバリという視線で睨まれてしまった。


「……話を戻す」


 そのまま戦闘にでもなりそうな雰囲気だったが、ラインは視線をそらしただけで冷静さを取り戻した。


「モンスターの模倣体を他世界のダンジョンに送る際、その存在力に応じて世界間に存在する次元の壁が削り取られる。お前たちがモンスターを処理した後に獲得する青水晶がそれだ」

「ははん?」

「青水晶そのものは我らにとって対して価値のあるものではないが、壁が削り取られたということには意味がある」

「は~ん?」


 つまり、ダンジョンを大量に作ってモンスターを送り込んでいるのは、次元の壁を削るためってことか?


「そんなことして何の意味がある?」

「我々は世界を簡単に作ることができる」

「うん?」

「だが、自分たちが作っていない世界を知らない」

「ううん?」

「自分たちが作っていない外の世界にはなにがあるのか? それを知りたがっている一派がいる」

「ほほう?」


 なんだそれ?


「なんか……人間が『神の実在を証明したい』って言ってるのと似たようなのを感じるな」

「まさしくそれだ」

「認められちゃったよ」

「人間を作った神がいるように、神を作った神……高位を超えた超位の存在がいるのではないか? 我々はずっとその疑問を無視できずにいた」

「神の自分探しかよ」

「はっ! まさしくだな」


 中二病……。

 いや自分探しは高二病か?

 いやいや、そもそも〇二病に区別されないんだったか?

 まぁ、全て人格形成に伴う黒歴史製造過程でしかないんだが。

 そんな俺もまだまだ黒歴史を作っちゃう年代である。

 後の自分が頭を抱えて悶絶することになろうとも、いまの俺は進み続けるわけだが。

 同じように、師匠たちもいまのまま進み続けるわけだ。


 え? なんで突然師匠が出てきたかって?


「つまり、師匠連中も神の一派なわけだ」

「そうだな」

「で、俺とあんたはどっかで会っている」

「…………」

「そこは認めたくないか?」


 この声、どこかで聞いたと思ってずっと考えていた。

 思い出したのは秋葉原の動乱の時、ラスボスのバシアギガを倒したときに聞こえた声だ。

 バシアギガもここで養殖されているんだとしたら、そいつを通してこいつが声を届けたり干渉したりしたという可能性は成り立つ。

 だが、そこでドヤるにはまだ早い。

 もっと記憶を掘り返せ。

 もっと以前にもこいつの声を聞いている。

 ちょっと声質とか違ったかもしれないが、ただの音声ではない部分で、俺はこいつの意思を聞いている。


 そうだ……思い出した。


「魔神王エンザライン?」

「……そうだ」


 そっぽを向いてかつての魔神王様は答えた。

 拗ねておられる。






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